【家族の声】感覚過敏の弟を持つ兄の立場から。弟が不登校で悩む姿を側で見て感じたこと

はじめまして!高校3年生のK.Nと申します。今回、コラムを寄稿させて頂くことになりました。拙い文章ですが、少しでも多くの方々に読んで頂けましたら幸いです。

7つ年の離れた私の弟について

私の弟は感覚過敏です。今回は兄としての立場から弟の辛さについて書いていきます。

感覚過敏は、周囲の音やニオイ、味覚、触覚など外部からの刺激が過剰に感じられ、激しい苦痛を伴って不快に感じられる状態のことをいいます。

しかし、感覚は他人との比較が困難なため、自分が感覚過敏だと気付かない人も多いようです。

その中で私の弟は、「嗅覚」「聴覚」「視覚」の感覚過敏があります。その結果、不登校になっています。小学1年生の時は学校に通っていましたが、給食のニオイが嫌、周りの子の声がうるさい、蛍光灯が眩しい、などの理由で徐々に通えなくなってしまいました。

当初、私を含めた家族はただ我慢弱いだけだと思っていました。しかし、調べていくうちに感覚過敏の存在を知ったのです。感覚過敏が不登校に繋がることもあり、弟の例が珍しいわけではないと思います。

現在、2016年に成立した「教育機会確保法」 によって、学校を休むことの必要性や学校以外の場の重要性が認められています。そのため、感覚過敏の有無に関わらず、不登校の子どもがいる家族は、無理に通わせることはしないでほしいと私は思います。

弟は、学校に通えなくなった1年間は、学校に戻ろうとして、ニオイや音を我慢し無理をしました。そのため、精神的に落ち込んでしまったり、学校に通えない自分に対する嫌悪感で自己肯定感が低下し、苦しい状況に陥っていました。

また、弟のような嗅覚過敏、聴覚過敏、味覚過敏以外にも、マスクや服の感触が苦しい触覚過敏や、偏食になる味覚過敏など、感覚過敏で苦しむ人々は想像よりも多く存在します。1人でも感覚過敏で苦しむ人々や感覚過敏に伴う不登校で苦しむの人々を減らすためにも、家族や周囲の人々の理解が必要だと思います。

サッカーが好きなのに感覚過敏があるとつらい

さて、ここからは自分の弟だからこその辛さをお伝えしたいと思います。私の弟はサッカーが大好きですサッカーをやっていた私の影響で小さい頃からボールと共に生活していました。

しかし、そんなサッカーが苦しくなってしまう状況が、夜のサッカーグラウンドの照明です。弟にとって照明は眩しく、サッカーに集中出来ないのです。大好きな事ををこのような不可抗力で邪魔されてしまう。こんなに辛いことはあるでしょうか。

感覚過敏があるとサッカー練習場のライトが眩しい

感覚過敏と不登校の関係

また、学校に行きたくても周りの子ども達の声が耳に入ると、校門の前で立ち止まってしまいます。学校に行きたくても行けないのです。校舎の中に入れても給食のニオイに耐えられず、教室に入ることはできません。このように学校は弟にとって苦しい場所になり、学校に行く回数が減っていきます。そして不登校であることがさらに弟を苦しめているようです。

例えば、サッカーの友達とサッカーの話は楽しくできるのに、学校の話になると全く話すことができません。それどころか、サッカー仲間に不登校であることを打ち明けること自体が難しいようでした。それがさらに自己肯定感の低下に繋がっているようにも感じられました。

あくまで弟の一例ですが、不登校と感覚過敏の関係は深いにも関わらず、学校や大人が理解できておらず対策ができていないことが課題だと感じています。

正直、感覚過敏の当事者ではない私には本人の本当の辛さは分からないです。しかし、今まで感覚に関して特に苦労なく過ごしてきた自分だからこそ、弟の状況を見て、何か役に立てないのか、解決できないのかと思うのです。

私は川崎フロンターレさんが出している 感覚過敏の疑似体験のVR映像を初めて見た時、感覚過敏の人々の中ではこんな世界が広がっているのかとゾッとしました。

映像:川崎フロンターレ/富士通(「感覚過敏の疑似体験」VR映像より)

その感覚過敏を理解してくれる人物が近くにいなかった事、そして周囲に理解できる人物が出てくるまで時間を要した事の辛さは想像できません。思い返すと、弟は周囲に感覚過敏の理解がある人物がいなかったため、最初は自分の感覚が普通であると勘違いし、我慢もしていたように思えます。

さらに、普通に学校に通えている兄がいる事のプレッシャーもあったでしょう。「兄が学校に通えているのだから自分も行かなければ」という見えない重圧もあった思います。正直、弟の事は親に任せている部分が自分にはありました。

しかし、自分がもっと早く感覚過敏について理解し、身体的にな解決は不可能でも精神的なケアができていれば、弟も少しは楽だったかもしれないと考えると、後悔が残ります。

さいごに、メッセージ。感覚過敏を知ってもらいたい。

感覚過敏がある人々にとってより良い社会を創るためには、周囲の人々の理解が必要不可欠だと私は考えています。また、子どもだけでなく大人でも感覚過敏で苦しむ人々は多くいらっしゃいます。

このことから私は、感覚過敏について理解を広げる活動をしながら、感覚過敏研究所の所長の加藤くんのように感覚過敏対策のプロダクトの製造も行っていきたいと考えています。

そしてこの記事が1人でも多くの方々の目に留まり、1人でも多くの方に感覚過敏について知って頂けたら幸いです。

これからもよろしくお願い致します。ではまた!

寄稿:K.N(投稿代行:感覚過敏研究所・所長 加藤路瑛)

写真提供:K.N

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