【体験談】かびんの森の宇宙人 vol.2《給食との戦い》

みなさんこんにちは。感覚過敏研究所ウェブ制作ライターのミノリンです。

「かびんの森の宇宙人」は、かびんの森に住む愛すべき我が息子、宇宙人クウのストーリーです。前回は、未知の感性を持つクウと私自身の皮膚過敏についてお伝えしました。

宇宙人クウは、味覚過敏と嗅覚過敏を持っています。この過敏をお持ちのみなさんには「あるある」だと思いますが、食では世間とのハザマで苦労します。特に給食で苦労した方は多いのではないでしょうか。我が家もしかり。

小学校からは、「育ち盛りなのに、あまり食べない時があるので心配です。」とよく連絡が来ました。「ほんの一口でも食べてみようね」という声かけはよくありましたが、クウは無理に食べると、本当に吐いて気分が悪くなってしまうのです。

私は食べ物を残すのが基本的には嫌いです。残してはいけないと育てられたし、学校でも「残さず食べよう週間」などがあり、「残すことは悪」という感覚があったのです。一方で、飲めない牛乳を居残りで無理に飲まされたり、牧場見学などでは私には地獄!の生乳を強いられたり、とてもとても辛い思いもしました。今でも鮮明に記憶に残っています。

そんな私も母親になると、子どもになんでもチャレンジしてほしくて、最初はクウに「ほんの一口でいいから」と食べてもらうために様々な努力をしました。

同じ食材でも調理法で食べられないことがあるため、食材によって煮る、焼くの調理法を変えたり、何でも顔に見立てて見栄えを楽しくしたり、面白いお皿に盛り付けてみたり、栄養の話をしたり、食べものの絵本で心を掴もうとしたりしました。

長男の時には「この食べ物には〇〇という栄養があって、脳の働きをよくするんだよ」などと説明したのが功を奏することが多々ありましたが、クウの場合はうまくいきませんでした。

本当に気分が悪くなる彼をみて、昔の自分の辛かった記憶がようやく蘇り、そこからは「楽しい食卓」であることを1番に考えるようになりました。

けれど、そんな私の紆余曲折の努力を他人は知る由もなく…

学校では、「家ではどうしているんですか?」「家庭でももう少し食育を」

そんな言葉もありました。

どれだけ頑張ってきたと思っとるんじゃ〜!!と、心の中で叫びつつ、「家庭でもいろいろ努力はしているんですよ」と、冷静に対応。いいんです。自分だけは知っています。愛する宇宙人のために、散々頑張ってきた自分を。

クウは歳を重ねるごとに、味覚がどんどん研ぎ澄まされたのか、食べられないものが増えました。ある日、学校から「クウがいなくなった」と連絡がありました。

今までも何度か、当時の担任とクウはもめたことがありました。今回はなんだろうと思ったら、発端は給食でした。クウは、自分が食べられないものは給食ではよそわないようにしたり、「お減らし」して残さないように努力していました。

その日のメニューは焼きそば。クウは家では焼きそばは大好きです。だから普通に盛ってもらいましたが、食べてみたら食感や食材が全然違ったのです。それで学校で大人気のメニュー「焼きそば」を残してしまいました。

クウが食べきれば、「すっからかん賞」(給食をクラス全員完食するともらえる)がもらえたらしく、「おかわりしたかった子もいたのに、なんで最初から減らさないんだ!」そう怒られたそうです。

いつも減らす努力をしているのに、残した理由も聞かれることなく怒られて、クウの怒りが爆発してしまいました。

「未来のことなんて誰にもわからないだろう!!」

そう言って、学校を飛び出したのです。まだまだ小学生。「焼きそばは好きなので普通によそってもらったけれど、家のと違って食べられなかった」とか、ちゃんと伝えられたらよかったのですが、「未来のことなんてわからない」というなんか抽象的でカッコいい言葉で伝えたので、真意が伝わりにくかったようでした。

そんなことが重なり、クウにとって給食の時間は楽しい時間ではなくなりました。

私は「食育」とは、美味しい・楽しい気持ちから生じるものだと思っています。残さないことは理想かもしれませんが、そこに重きを置きすぎては逆効果だと、クウから学びました。学校と相談して、クウは給食をやめ、お弁当にすることにしました。

私 「もし給食で好きなものが出ても食べられないけどいい?」
クウ「給食我慢して食べるよりずっといい」
私 「一人だけお弁当で、気にならない?」
クウ「給食食べてる方が俺にはかわいそうに思えるから平気だ」

そんな強い心でクウはお弁当生活を始めましたが、嫌いな給食の時は、においで吐き気がしてしまうらしく露骨に鼻を覆っていました。もうこの時は学校で心が疲弊していたのだと思います。チックも出るようになりました。でも、給食の時間に露骨に鼻を覆っているのは、給食が好きな子には何となく失礼な気がして、「好きな子もたくさんいるのだから、においがきつい時は他の部屋に行かせてもらうようにしよう」など一緒に考えながら工夫してしのぎました。

結局学校にはその辺りから行かなくなり、給食との戦いも終止符を打ちました。学校に行かなくなって、チックもだんだん治りました。私の友人の栄養士が言っていたことがあります。

育児中のお母さんから、「うちの子は〇〇が食べられなくて」「なんでも食べられる子を育てたい」、色々な相談を受けているけれど

「何より大切なのは、心地よいと思える場所で、心地よいものを食べること。それが一番の食育。」

クウは相変わらずほぼ定番のものしか食べず、時にはまるでヨガマスターのようなヘルシーな食生活ですが、ただ一緒に楽しく食べる。それだけでいいのだと、彼の風邪一つひかない健康っぷりからも確信しています。

次回は、クウの「味覚過敏という才能」について書きたいと思います。

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