【開催レポート】東大駒場リサーチキャンパス「センサリーツアー〜五感を使ってキャンパスを探検しよう〜」

東京大学センサリーツアー

感覚過敏研究所の加藤です。今回は、2024年6月8日に東京大学先端科学技術研究センターで開催されたセンサリーツアーをレポートします!

そもそも「センサリーツアー」って聞きなれない言葉ですよね。

センサリーツアーとは、五感を使って街歩きや散策をするプログラムやイベントのことをいいます。基本的には、「騒がしい場所」「眩しい場所」「ニオイのある場所」などを感じながら地図に記録していきます。発達障害や精神疾患など感覚過敏のある方のために、五感情報をマップにマークする「センサリーマップ」がありますが、それをワークショップやイベントでみんなでやりましょう!というのが「センサリーツアー」です。

東京大学のセンサリーツアー

このイベントは、2024年6月7日、8日に開催された「東大駒場リサーチキャンパス公開2024」のイベントプログラムの1つとして実施されました。東京大学駒場リサーチキャンパスでの研究発表や最先端技術が一般公開されており、2日間で多くの方が来場されます。

センサリーツアー概要

概要:オープンキャンパス中の先端研の建物の中や広場を五感を使いながら散策します。照度計や騒音計も使いながら「眩しいってなんだろう?」「静かってどんなこと?」など、普段意識しない日常的な環境を考えるワークです。予約不要、年齢不問。どなたでもご参加いただけます。インクルーシブな取り組みに興味がある方、先端研が大好きな方、お子さまのご参加も大歓迎です。ツアーガイドは感覚過敏研究所・所長 加藤路瑛が担当する予定です。

https://komaba-oh.jp/event/1944

センサリーツアー実施レポート

集合場所で待つ私。イベントは予約制ではないので、参加してくださる方がいるのか少し不安・・・X(Twitter)で「参加します!」とコメントくださっている方がいらっしゃったので、ゼロではないはず!

たくさんの方が集まってる!!!(計26名の方が参加くださいました!)

参加された方には、ツアーで使用する資料やボードをお渡ししています。まずは、照度計と騒音計を使用して、集合場所の照度と騒音を計測して、書き込みします。

東京大学カームダウン・クールダウンスペース

次に、キャンパス内に用意したカームダウン・クールダウンスペースに!集合場所より、照度も騒音も数値が下がっているはず!

後述しますが、このカームダウンスペースは常設ではなく、オープンキャンパスのために用意したものです。センサリーツアーのために用意したのではなく、オープンキャンパス期間中、どなたでも利用できるようにしていました。

次は、建物を出て広場へ!まずは太陽の光がいかに明るいかを照度計で体験。数値を見てみなさん、びっくりされます!室内と桁が全く違うのです。

オープンキャンパス中、広場にはキッチンカーがたくさん!食べ物のニオイもします。料理をするキッチンカーではポータブル電源や換気扇のファンの音もします。そして、人も多い。さらに、この時間帯は、音楽イベントも開催されていました、

こうして、意識して視覚、聴覚、嗅覚を使って歩くと新しい発見もあります。みなさんが、どんなことを感じてくださるか、とても興味深いです。

私たちの日常はさまざまな刺激に囲まれています。意識しなければ問題なく過ごせる人が多いですが、少し五感を研ぎ澄ませて周囲を見渡すと、いかにこの社会が音や光やニオイに溢れているか、そして都市部やイベントでは、人の多さや人との距離なども意識できると思います。

感覚過敏の人たちが、いかに刺激の洪水の中で生きているか少し知っていただければ嬉しいですし、感覚過敏関係なく、自分の感覚を大切にできる機会になれたらいいなと思ってセンサリーツアーを行っています。

30分のツアー予定だったのにかなりの時間オーバー。最後に別の棟に用意されているカームダウン・クールダウン室で感想や質問、アンケートタイム!

センサリーマップステッカー

センサリーツアー中は、キャンパス内の地図にセンサリーマップステッカーを貼ってもらったり、気づいたことを書き込んでいただいて、オリジナルセンサリーマップを作っていただいていました!

参加者のみなさんに「感覚過敏応援団缶バッジ」をプレゼントしてセンサリーツアーは終了です!

(所要時間30分としていましたが、1時間かかってしまいました。数ヶ所だけのツアーですが、移動もしているので1時間は必要でした)

作成されたオリジナルセンサリーマップ

参加者の方の中で作成したマップを公開してもいいよ!と言ってくださった方のマップを紹介します!

今回はキャンパス内の2つの建物と広場だけのツアーでしたが、テーマパークや動物園、水族館、ショッピングセンターや、公園、そして商店街や観光地などでもセンサリーツアーをやれたらいいなと思っています。(企画したい方、是非、ご連絡ください!-お問い合わせ-)

カームダウン・クールダウンスペースも用意

オープンキャンパスでは3ヶ所にカームダウン・クールダウン室を用意しました。事前、打ち合わせでカームダウンボックスがスペースを設置できる廊下がないか探しましたが、来場者が多いこともあり、適切な場所が見つかりませんでした。

そこで、比較的人通りが少ない場所での空き教室をカームダウン・クールダウン室として用意することになりました!カームダウンボックスが用意できなくても、空き教室など、まずは取り組めることから始めてOKです!

まだ社会に浸透していないカームダウン・クールダウンスペースですが、イベントマップにも記載いただき、実際に使用してくださった方もいらっしゃるようです。

来場者が多いイベントでは、このようなカームダウンスペースやルームが一時的でも用意いただけたらいいなと思っています。

カームダウンスペース・カームダウンボックス専門店

カームダウンスペース専門ストア
https://kabin.life/service/calmdown/

謝辞

私は東京大学の研究室で感覚過敏の研究に参画したり、このようなセンサリーツアーを実施しているので、東京大学の学生だと思われることが少なくありません。本当に東大生になれればいいのですが・・・笑。(私自身は、感覚過敏研究所での事業をしている起業家・研究者でもありますが、早稲田大学人間科学部eスクールに在籍する学生でもあります。早稲田大学とは感覚過敏に関して全く連携できていないので、いつか実行したいです)

そんな私が、今回、東京大学でセンサリーツアーを開催できたのは、先端研の稲見昌彦教授のおかげです。私は情報処理推進機構(IPA)の2023年度未踏IT人材発掘・育成事業に採択された未踏クリエイターで、ウェブ版センサリーマップを未踏期間中に開発していました。(諸事情あり、正式リリースはまだです。)

https://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/it/2023/gaiyou_in-1.html

センリーマッププロジェクトを選出くださったのが稲見先生であり、プロジェクトのPMとして未踏期間中はたくさんの助言をいただきました。私にとって、未踏期間はインクルーシブな社会について深く考える時間になりました。

未踏IT2023年度チーム稲見
↑2023年度未踏IT人材発掘・育成事業、稲見PMチームのメンバーと稲見先生の研究室にて

未踏期間が終了していましたが、稲見先生から「センサリーマップを東大でやりましょう!」とお声がけいただき、実現したのが今回のセンサリーツアーでした。

また、開催にあたっては、東京大学 先端科学技術研究センター 広報広聴・情報支援室のサポートがあって実現することができました。ありがとうございました!

おわりに

センサリーツアー開催レポート、いかがだったでしょうか?東京大学はインクルーシブな取り組みをさまざまな形で行っています。センサリーフレンドリーな取り組みは、まだ少ない社会ですが、東京大学もこれをきっかけに、さらにセンサリーフレンドリーな大学になっていくのではないかと思っています。

感覚過敏がある人の受験の合理的配慮もそうですが、東京大学の学生が利用できるカームダウン・クールダウンスペースが設置されたり、バリアフリーマップにセンサリールーム版ができたり・・・そんな未来を私は想像しています。

そして東京大学がはじめれば、きっと全国の大学や教育機関にも伝播していくと思っています。私も感覚過敏の人が過ごしやすい場所が増えるようにこれからも頑張ります。

この記事を書いた人

jiei kato

感覚過敏研究所 所長
加藤 路瑛

自分の困りごとである「感覚過敏」の課題解決に向き合い、2020年1月に感覚過敏研究所を設立。感覚過敏がある人たちが暮らしやすい社会を作ることを目指し、商品・サービスの開発・販売、感覚過敏の研究や啓発に力を注いでいる。所長挨拶はこちらから

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