
クワイエットアワーとは、お店のBGMや照明を落として、感覚過敏の方が落ち着いて買い物や館内滞在できる時間帯やキャンペーンデーのことです。今回は、神奈川県のヤマダデンキで実施されているクワイエットアワーについて紹介します。
ヤマダデンキのクワイエットアワーについて
ヤマダデンキのクワイエットアワーのきっかけは、相模原青年会議所が2022年に取り組んだ「クワイエットアワー」のプロジェクトでした。相模原青年会議所の呼びかけで、相模原市内の複数の小売店がクワイエットアワーを実施し、ヤマダデンキ・テックランド相模原店も参画されていらっしゃいました。相模原青年会議所のプロジェクト終了後も相模原店はクワイエットアワーを継続することを決定され、その取り組みは、神奈川県内の各店に広がっています。
2024年2月より、実施店舗を拡大し、神奈川県の対象18店舗で毎月第2・第4火曜日の10時から11時までクワイエットアワーが実施されています。
ヤマダデンキのクワイエットアワー概要
実施店舗
■神奈川県
市 | 店舗名 | 電話番号 |
相模原市 | テックランド相模原店 | 042-786-8211 |
厚木市 | テックランド厚木店 | 046-294-1020 |
海老名市 | テックランド海老名店 | 046-236-5393 |
小田原市 | テックランド鴨宮店 | 0465-48-6122 |
秦野市 | テックランド秦野店 | 0463-85-6030 |
川崎市 | テックランド向ヶ丘店 | 044-856-5515 |
座間市 | テックランド座間店 | 046-257-8880 |
平塚市 | テックランド平塚店 | 0463-51-1500 |
大和市 | テックランド大和店 | 046-271-3056 |
大和市 | テックランドNew大和深見店 | 046-264-3100 |
横須賀市 | テックランド横須賀店 | 046-822-4960 |
横浜市 | テックランド横浜本店 | 045-820-5656 |
横浜市 | テックランド青葉店 | 045-978-5090 |
横浜市 | テックランド横浜泉店 | 045-806-1151 |
横浜市 | 家電住まいる館×YAMADA web.com 横浜金沢店 | 045-772-8653 |
横浜市 | テックランド上山店 | 045-935-5512 |
横浜市 | テックランド戸塚店 | 045-410-6661 |
※実施店は変更される場合がありますので、最新版はヤマダデンキのホームページでご確認ください
開催日
毎月第2・第4火曜日の10:00〜11:00
実施内容
- 店内BGM、館内放送のカット(緊急時は除く)
- 店内照明の部分的な消灯
- 展示している家電商品の消音
引用/参考先
ヤマダデンキ訪問&体験レポート

感覚過敏研究所の所長・加藤路瑛がテックランド青葉店を訪問し、クワイエットアワーを体験してきました!以下、加藤のレポートです!(2024年12月10日訪問)

エスカレーターをあがり、店舗の入り口にはクワイエットアワーのポスターが掲示されています。
クワイエットアワーでの光(照明)について

天井を見上げると、一部の蛍光灯が消えていることがわかります。ただし、減灯していても十分な明るさです。(そもそも日本の店舗、特に電気店は明るすぎる傾向はあると思う)

ディスプレイの電源も消えています!実は、電気店やドラッグストア、ショッピングモールで音や光の情報が多いのがこのデジタルサイネージなのです!天井から流れる館内BGMとは違って、デジタルサイネージは各商品のPRのために、色々な方向から音が出ていて、これが感覚過敏のある人たちのパニック発作や、疲れやすさの原因でもあると私は思っています。
クワイエットアワーが終わったら、全てのデジタルサイネージの電源をオンにしていく作業は大変だなと思いましたが、クワイエットアワーがなくても毎朝、電源をつけていくので、点灯作業を1時間ずらすだけとおっしゃっていました。

店内奥はテレビコーナー。お分かりいただけるでしょうか?テレビの電源が消えています。テレビの販売エリアって、たくさんあるテレビモニターの全てから、さまざまな映像が流れてきて、視覚過敏や聴覚過敏のある方は圧倒されてしまいます。ですから、このように画面が消えていると落ち着きます。(テレビを購入したいときは、店員さんに声をかければ電源を入れてくださいます)
そして、天井も電気が消えてる!これもクワイエットアワーだと思っていたら、実は違うそうです。もともとテレビの画面が見やすいようにテレビエリアは消灯していることが多いそうです。なるほど!の瞬間でした。

クワイエットアワーは10時から1時間限定です。11時になると店内が明るくなり、BGMも流れはじめました。上記の写真でビフォーアフターを比較できます。減灯していても違和感がないくらいの明るさを感じましたが、こうして全ての天井照明が点灯するとその明るさに驚きました。
クワイエットアワーでの音(BGM)について
店内にBGMは流れておらず、デジタルサイネージの電源もオフになっているので、商品説明やCMのような音声がいっさいありません。では、店内は静かかというと、お客様や店員もいらっしゃいますし、空調の音もしますし、それなりのざわつきがあり、静かで緊張するという感じは一切ありませんでした。
ただ、店員コール用の電話の音が目立ちましたし、たとえば、クワイエットアワー時に、テレビをつけて確認したい、ドライヤーの電源を入れてみたいなどの希望があった場合は、その音は目立つかもしれないと思いました。
クワイエットアワー中の店内音声
クワイエットアワー終了後の店内音(いつもの店内)
上記2つの音を比べてください。みなさんはどちらが落ち着くでしょう?
店舗スタッフさんにインタビュー
ヤマダデンキのクワイエットアワーの取り組みは、静かな環境で落ち着いて買い物をしたい人にはありがたいものですが、現場で働くスタッフさんはどう思っているか気になるところ。素直な意見を聞いてみました!
クワイエットアワーが始まって10ヶ月くらい経ちましたが、準備で大変なことはありますか?
普段、点灯している照明や店内放送などの電源を入れるのを1時間ずらすだけですので、特別、準備で大変ということはありません。
私たちのような感覚過敏の人にとっては、静かなお店はありがたいですが、スタッフさんの働く環境としてはどうですか?音や光を少なくすることで困っていることや不便さがあればお聞きしたいです。
やっぱり緊張しますね。音を立てないように気をつけて行動するので普段より緊張感があります。
お客さまと接する中で、クワイエットアワーの問題点や改善点があればお聞かせください。
店内が静かな分、接客の声は周囲に聞こえやすいという課題はありますね。特に、お客様情報を含む会話も周囲に聞こえやすくなってしまいますので、気を配る必要があります。
クワイエットアワー中は、お客様に声をかけないなど工夫されていることはありますか?
通常の営業スタイルとして、お客様から質問や説明を求められたときにお話させていただいているので、クワイエットアワーに限らず、無理なお声がけはしていません。クワイエットアワー中は、「いらっしゃいませ」というご挨拶も控えめにしています。
所長・加藤路瑛のレビュー
クワイエットアワーは海外を中心に広がっており、照明を落とす、BGMを消すといった基本的な取り組みについては理解していました。しかし、実際の店舗での体験を通じて、レポートやコラムを読むだけでは得られない知見を得ることができました。
小売店にとって、売上を確保することは最優先事項です。感覚過敏の人のため、多様性社会の実現やSDGsの一環として意義があったとしても、小売店の本分が損なわれてはなりません。そのため、感覚過敏研究所としても「クワイエットアワーを導入しましょう!」と気軽に言ってはいけないと慎重にしていました。
家電量販店は、賑やかで明るい空間のほうが売上に結びつきやすいと考えられます。そんな中で、これまでの運営方針とは異なる「静かで暗めの店舗」を試みるヤマダデンキの決断は素晴らしいものです。今回の視察では、ヤマダホールディングスのサステナビリティ推進部の方々と意見交換しながら、クワイエットアワーを体験する貴重な機会をいただきました。
ヤマダデンキのクワイエットアワー導入のきっかけは、相模原青年会議所が2022年に実施したプロジェクトでした。この呼びかけにより、相模原市内の複数の小売店がクワイエットアワーを導入し、ヤマダデンキ相模原店も参画。その後、プロジェクト終了後も相模原店は継続を決定し、現在では神奈川県内のヤマダデンキ各店に広がっています。
まだ他県の店舗には広がっていませんが、この取り組みを継続するヤマダデンキの決断には敬意を表したいです。感覚過敏研究所としてもクワイエットアワーの普及を目指し、多くの小売店に提案していますが、実際には「必要性は理解するが……」という段階で止まってしまうケースが少なくありません。
普段と異なる施策を導入するのは大きな決断です。売上増加が確実に見込めるといった明確な経営指標があれば判断しやすいのですが、現段階では十分なデータがありません。
そこで、クワイエットアワーの経済効果(売上、来場者数、滞在時間、購入単価など)を研究したいと考えています。「導入を検討してみたい!」という小売店の方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。また、経済効果の検証とは別に、社会的意義を感じて挑戦してみたい小売店様も募集中です。ぜひ、感覚過敏研究所のお問合せフォームからご連絡ください。
五感にやさしい取り組みの情報提供をお待ちしています
感覚過敏研究所では、カームダウンスペースやクワイエットアワー、センサリールームなど、感覚にやさしい取り組みを紹介するコラムを公開しています。しかし、感覚過敏研究所のメンバーだけでは、その全てをカバーするのは難しい状況です。
そこで、みなさんからの写真や動画のレポートを募集します!一緒に五感にやさしい社会づくりを目指しましょう!みなさんの協力をお待ちしています!