カームダウンスペースの選び方:パーテーション型を導入する場合の注意点や課題について解説

カームダウンスペースの選び方。パーテーション型の導入時の注意点。

こんにちは。感覚過敏研究所の所長・加藤路瑛です。最近、カームダウンスペースを作りたい、導入したいという相談が増えてきています。

カームダウンスペースとは、音や光などの環境刺激によって心身に負担を感じやすい方が、心や体を落ち着かせるための避難所・休憩所です。感覚過敏や発達障害の方の支援として語られることが多いですが、パニック障害やさまざまな精神疾患を抱える方が、外出時にカームダウンやクールダウンを必要とする際にも利用できる空間・施設です。

現在、公共施設や文化施設を中心に、カームダウンスペースの導入事例が増えてきており、それにともなって、導入を検討している施設も増えています。

その中で、「加藤さん、パーテーションってどうですか?」という質問をいただくことが多いので、今回はパーテーション型のカームダウンスペースについて説明しましょう!

カームダウンスペースの目的機能は3つ

カームダウンスペースの目的機能は大きく分けて以下の3つあります。

視線の遮断

1つ目の機能は、周囲からの視線を気にせず休憩できる空間の提供です。パーテーションによって他者の目を遮ることで、利用者が安心してリラックスできる環境を作り出します。この視線の遮断は、利用される方の心理的な負担を軽減し、安心して休める場を提供します。

②眩しさの軽減

2つ目の機能は、照明の眩しさを軽減することです。過剰な照明は多くの人にとって刺激が強く感じられ、特に視覚過敏や精神疾患のある方にとっては非常にストレスとなります。スペース内に差し込む光の量を抑え、比較的暗い落ち着いた場所で体を休めることが必要なケースもあります。(※完全に天井があるボックスは消防法の制約を受けます。そのため、ルーバーやメッシュで開口率を確保しているカームダウンボックスですと、比較的導入しやすいでしょう。)

③騒がしさの緩和

3つ目の機能は、騒がしさを減音することです。多くの場所では環境音が常に存在し、これが集中力を奪ったり、リラックスを妨げる要因となることがあります。過剰な音をあびることによってパニック状態になる場合もあります。音を吸収する素材の利用や、音を遮るパネルの配置によって、騒音を低減するカームダウンスペースは、特に聴覚過敏や精神疾患のある人々にとって重要です。

パーテーション型は?

カームダウンスペースは上記3つのうち、どの部分を重視するかによって適したものが変わってきます。このうち、パーテーション型は「①視線の遮断」のみ対応したスペースになります。

周囲の視線を気にせす休みたい、空港のような広いスペースや待合室が苦手な広場恐怖症の人のカームダウンスペースとして、パーテーション型は十分機能します。

しかしながら、「②眩しさの軽減」「③騒がしさの緩和」を目的とした場合、パーテーション型では対応が難しくなります。

上記の写真のように、パーテーション型はスペース内に光が差し込みやすいです。右の写真のように座る場所には光が入らないようにすることは重要ですが、座った目の前は明るい状況です。パーテーションの場合は、「照明の光が入り込まない場所を探す」「周辺の照明の向きなどを工夫する」「光を遮るくらい高いパーテーションにする」「布などで天井を作る(※消防法の確認が必要)」などの工夫が必要です。

これはボックス型も同様です。多くのカームダウンボックスは、消防法の関係で天井が空いております。多くのケースでは、メッシュやルーバーで光を緩和させていますが、真上に照明があったり、明るい場所の場合、ボックス内に光は差し込みます。

上記の写真をご覧ください。同じ商品ですが、設置環境によって、ボックス内の明るさが大きく違うことがお分かりいただけると思います。

残念ながら、カームダウンスペースを導入される場合、「どの会社からどの商品を買おうかな」という考え方になってしまいがちですが、何を買うか、何を置くかはそれほど重要ではなく、「どのような機能までを求めるか」を考え、そして、設置する場所の環境調整が必要です。この設置前の環境調整のないままに、カームダウンスペースを作ってしまうと、設置側と利用者の想いにズレが生じてしまい、「ぜんぜん休めなかった。」「カームダウンスペースって意味があるの?」という残念な感想をもたれれしまう可能性があります。

カームダウンスペース導入に重要なこと

①カームダウンスペースの目的を確認する

設置するカームダウンスペースは「周囲の視線を遮断」できればいいのか「眩しさも緩和」させたいのか、「減音」もしたいのか?施設側・提供者側が明確な意思を持つことが重要です。そして、できること、できないことをきちんと伝える必要があります。そうしなければ、「眩しかった」「ぜんぜん静かじゃなかった」のような不満が利用者に生じてしまいます。

②設置箇所の環境調整を考える

多くのケースでは、設置できるスペースに限りがあるので、「カームダウンスペースが置けそうな場所」を選ぶことになります。しかし、照明の角度や、スピーカーの位置、人通りなど、カームダンの目的では適さない場所に置かれてしまうこともあります。

本来は、設置場所に適した場所を探し、その場所の環境調整をする必要があります。実は、ここが奥が深いのです。この部分をアドバイスできる人はほぼいないと思います。ですので、導入前に感覚過敏研究所に相談してほしいなと思っています。カームダウンスペースを購入して設置すれば、合理的配慮ができたと安心してはならないのがカームダウンスペースです。

③設置後の運用方法を考えましょう

さらに重要なのは、運用です。正直に申し上げると、この運用部分が最重要で、どのパーテーションやボックスを置くかという商品選択は大きな問題ではございません。

「誰でも使っていいのか?」「予約制のほうがいいのか?」「時間制限はあったほうがいいのか」「防犯ブザーは必要か?」「目的外利用を防ぐ方法は?」などです。この部分を検討しないまま、カームダウンスペースを置いてしまうと、トラブルが多くなってしまいます。

運用面の正解はなく、マニュアルも作れない部分です。設置場所やスタッフの配置などでできること、できないこともあります。感覚過敏研究所には、この運用面の情報が多く集まっており、より最適な運用のアドバイスが可能です。

まとめ

パーテーション型のカームダウンスペースは、「周囲からの視線を気にせず休みたい」というニーズには適しています。しかしながら、眩しさや騒がしさを緩和したいというニーズを満たすことは難しいアイテムです。

設置箇所の環境調整を行うことで、眩しさや騒がしさの緩和も対応できる部分があります。そのようなアドバイスが必要な時は、感覚過敏研究所にご相談いただければ幸いです。

所長レビューはこの人

jiei kato

感覚過敏研究所 所長
加藤 路瑛

自分の困りごとである「感覚過敏」の課題解決に向き合い、2020年1月に感覚過敏研究所を設立。感覚過敏がある人たちが暮らしやすい社会を作ることを目指し、商品・サービスの開発・販売、感覚過敏の研究や啓発に力を注いでいる。所長挨拶はこちらから

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