専門家対談シリーズ「作業療法士さんに聞いてみた」作業療法と感覚過敏

感覚過敏対談

感覚過敏研究所では、多方面の専門家の方々に「感覚過敏」をテーマに、質問をさせていただいたり、意見交換をしています。その内容をコラムで紹介していきます。感覚過敏にお困りの当事者やご家族、支援者の方々、研究者の方々などたくさんの方にお伝えしていきたいと思っています。

質問者は、感覚過敏研究所の加藤です。

聞き手

jiei kato

感覚過敏研究所 所長
加藤 路瑛

自分の困りごとである「感覚過敏」の課題解決に向き合い、2020年1月に感覚過敏研究所を設立。感覚過敏がある人たちが暮らしやすい社会を作ることを目指し、商品・サービスの開発・販売、感覚過敏の研究や啓発に力を注いでいる。所長挨拶はこちらから

本日の専門家を紹介!

今回は作業療法士の方喰醇(かたばみ じゅん)さんにお話をうかがいました。

お話してくださった人

作業療法士
方喰醇(かたばみ じゅん)

国際医療福祉大学・大学院修士課程卒業。国際医療福祉大学病院リハビリテーション室に勤務中。子どものリハビリだけでなく地域検診や保育園、学校支援にも取り組んでおります



方喰(かたばみ)さんは、以前、「感覚過敏の方のために自分ができることをしたい!」と感覚過敏研究所にお問い合わせくださり、それ以来、作業療法に関する質問をさせていただいたり、一緒に取り組めることを模索している仲間でもあります。

以前、感覚過敏研究所にコラムも寄稿してくださっています。是非、そのコラムもご覧ください。

寄稿:「感覚過敏に対して作業療法士として関わるということ」

作業療法士・方喰(かたばみ)さんに質問!

感覚過敏研究所・加藤が聞いてみたいことを、どんどん聞いてみました!(一部、感覚過敏コミュニティ「かびんの森」のメンバーからの質問も含んでいます)

作業療法士って名前は聞きますがどんな仕事をするのですか?

私たち作業療法士は心と身体のリハビリテーションを行う仕事です。リハビリテーション職には、作業療法士の他に理学療法士、言語聴覚士が存在しています。その中でも、作業療法ってなんだろう?って疑問を抱く方が多いと思います。

作業療法の「作業」とは生活に関わるすべての活動を指している言葉です。食べること、トイレに行くこと、仕事や趣味の活動、料理や洗濯などの家事、これらどれ一つを欠いても自分らしい生活を送ることが成り立たなくなってしまうでしょう。毎日生きている日常生活の中には、当たり前のように行っている活動がたくさんあるのです。そんな一人ひとりの作業を守るために支援するのが作業療法士という仕事になります。

当たり前の日常は身体と心のどちらかが崩れてしまうと、今まで通りに過ごすことが難しくなってしまいます。それは大人だけでなく、子どもからお年寄りまですべての人が当てはまることです。作業療法士は日常生活に支援が必要なすべての人を対象として、医療、介護、福祉をはじめ、保健、教育、労働、司法など幅広い領域で働き、ライフステージ毎に支援を行っています。

お仕事の中で感覚過敏の方に接することは多いですか?

私は、子ども領域の作業療法士をしているので発達障害のお子様と関わることが多いです。発達障害が背景にある子の中には感覚の問題を抱える子が多いと言われており、臨床場面でも感覚過敏が原因で困っている子の支援を行うことが少なくないです。

感覚過敏へのアプローチはどんなことをしていますか?

アプローチとしては、「センソリーダイエット」「メタ認知練習」「感覚欲求に合わせた遊び・活動の経験」を軸に考えて行なっております。

センソリーダイエットでは、パーティションやイヤーマフを使用して疲れやすい・注意が逸れやすい感覚刺激を減らすなど調整を行います。本人に実際に体験をしてもらうことで初めて細かな変化が評価することができます。その変化をもとに学校や自宅など生活空間を整えていきます。

メタ認知練習は、自分自身がどのような感覚で疲れやすいのか、あどのような環境であれば過ごしやすいのかを共に学んでいくことを目標にしております。チェックリストを用いながら、日常生活を振り返っていき対応策を共同して計画していきます。

感覚欲求に合わせた遊び・活動の経験をつませる目的は、発達段階に合わせた経験が少ないと感覚過敏があるお子様の中には過敏性により日常的に行えない活動がある子がいることがあります。

作業療法のなかで、どの作業が感覚過敏に有効だと考えますか?逆に、どの感覚過敏に作業療法が有効だと考えますか?

これ!といったものは個人差が強いため具体的に示すことが難しいですね。しかし、作業療法の考えとしてフロー状態、集中して自己の世界に没入できるような作業活動は心身ともに良い影響を与えると考えております。感覚過敏の方でも、熱中している時には周囲の環境に注意が向かずに無意識に疲労が軽減されているということが聞かれます。自分自身がどのような活動であれば熱中できるのか考えていくと、生活を楽にするヒントが隠れているかもしれません。

感覚過敏を悪化させる作業や環境がある可能性はありますか?その場合の対処などで考えているものはありますか(または今していることはありますか)?

感覚処理の問題には心の反応が影響を及ぼしやすいです。同じ作業・環境でも、気分が落ち着かない、不安が強いなど心の均衡が保たれていないと問題が増悪することがあります。そのため、まずは心理的安全性を確保することが大切です。周囲の関わる人達の理解と物的環境の調整をしたうえで、体の疲れや心のコンディションを確認してから活動に参加するように助言をしております。

自分の通っている病院に作業療法士がいない場合はどうしたらいいですか?

基本的な診察は医師が行なってくださるので、お住まいの地域の小児神経専門医の先生にご相談をすると連携がとりやすくなると思います。
https://www.childneuro.jp/modules/general/index.php?content_id=3

また、各都道府県の作業療法士団体があるので、お住まいの地域の職能団体にご相談いただけると作業療法士の支援に繋がることができるのではないかと思います。
https://www.jaot.or.jp/link/todofuken/

感覚統合という言葉もよく見聞きしますが、感覚過敏の緩和につながるのですか?どんなことをするのですか?

感覚統合療法自体は学習障害や自閉スペクトラム症のお子様の抱える問題を感覚面から捉えようと開発されたものになります。運動療法による感覚と運動の繋がりを促進、感覚評価による環境調整によって問題を解決していくことを目標としており、直接的に感覚過敏が緩和するとは限りません。
詳しい内容に関しては、日本感覚統合学会のHPをご覧いただけると幸いです。
http://si-japan.net/

作業療法士の視点から、当事者や家族に向けて、日常生活の中で気をつけて欲しいことはありますか?

当事者の方に対しては、自分を責めないこと、セルフケア能力を磨くことを気をつけていただきたいです。周囲には理解が得られにくい悩みが多くあると思いますが、それは自分だけが原因ではないので、自分を責めずに頼れる周囲の人たちを見つけて相談してもらえるとありがたいです。一方、生活の中では自分自身でどうにかしなければいけない状況があることも現実です。我慢や努力だけではどうしようもないことは必ずあるので、自己の理解を深めて予防策を考える、身を守るための方法や道具を決めておくなど、自分で自分を守るためのセルフケア能力を是非磨いていただきたいです。

ご家族の方に対しては、否定をせずに受容してあげるという点を気をつけていただきたいです。感覚面の問題は理解を得られにくく、否定的な扱いを受けやすいです。生活の中には本人も気づかない問題がたくさん隠れており、不安な気持ちで生活をしている人が多いです。そんな日常の中で身近な家族が受け入れてくれて、一番の理解者で居てくれることは本人が前に進んでいくための支えとなります。支援をするご家族様にもケアラーとしての負担が必ずかかると思います。ご家族様も心と身体の健康管理やストレス発散などに気をつけ、専門家など頼れる相手を見つけておくことが支援をしていく上で大切になると思います。

もっと気軽に作業療法士さんに相談できる場があればいいなと思いますが、どんな仕組みが社会にあれば良いと思いますか?

地域に作業療法士が根付いて、地域を丸ごと支援していけるような仕組みができることが理想だと思っております。作業療法士団体も積極的に地域へ参画する取り組みを進めておりますので、コラムを拝見してくださっている皆様と作業療法士が繋がれるよう尽力していきたいと思います。

かたばみさんから見て・医療・福祉・教育において、感覚過敏の方への支援や関わり方として、何か問題点を感じますか?もしあれば教えてください。

感覚過敏の方への支援に関する問題は社会的認識が不十分であり、適切なサポートが行き届いていないことに問題があると考えています。感覚過敏の問題は、個人だけでの解決は難しく周囲の理解が不可欠になります。そのため、感覚過敏に関する知識が正しく社会的に広まり、周囲がサポートできる体制が整っていくことが課題解決への一歩になると思います。

最後に、感覚過敏で困っている方やご家族に対してメッセージを!

日々辛い生活を送っている方もいると思います。一人ではどうしようもできない問題は必ずあるので、一人で抱え込まずに周囲の方を頼ってください。

まだまだ社会的には理解が得られづらいという問題はありますが、作業療法士やその他専門家一同は問題解決のために動いております。当事者の方やご家族の方のご意見や発信などをもとに社会を変えていきたいと思いますので、今回のコラムを拝見された方の中で困りごとがある方などは是非コメントをいただきたいです。支援が必要な方のところへ適切な支援を届けられる社会の実現のため、応援のほどよろしくお願いいたします。

おわりに

方喰(かたばみ)さん、たくさんの質問にお答えいただき、ありがとうございました!作業療法の観点から感覚過敏を緩和する方法はないかと考えることもありますが、そもそも作業療法士さんって、周囲にいないと、なかなかそのお仕事内容もわからないなと思って、今回のインタビューをお願いしました。

私自身も作業療法士の仕事について以前より理解や想像が広がりいました。一緒に感覚の困りごとに関してできることを模索していきたいと思っています。

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