東京国立博物館「あそびば☺とーはく!」のカームダウンスペース【所長・加藤の体験レポート】

東京国立博物館では、2024年11月8日から12月8日まで、小学生以下の子どもとその保護者を対象にした企画「あそびば☺とーはく!」を開催していました。

期間中、会場には、カームダウンスペースが用意されていました。カームダウン・クールダウンスペースとは、光や音などの感覚の刺激を遮断することで、感覚過敏によるストレスの軽減やパニックの回避やクールダウンに使用できるスペースです。

今回は「あそびば☺とーはく!」で設置されたカームダウンスペースについて紹介します!

「あそびば☺とーはく!」について

写真提供:東京国立博物館

全長約12メートルの「とーはく古墳」や、ボールプールの「こども遺跡」などがあり、他のお客さんに気を使わずに、声を出したり体を動かしたりして遊べるのが特徴です。「リラックスエリア」では、ぬり絵やパズル、150冊以上のお子様向けの本が用意されており、お子様も保護者の方も靴を脱いで一緒にリラックスして過ごせます。

さらに、この企画では、刺激から離れて、静かに気持ちを落ち着かせたいときに利用できる「カームダウンスペース」も用意されているなど、お子様が博物館をのびのびと楽しめる工夫がされています。

カームダウンスペース体験レポート

イベント会場は大きな広場になっており、その一角にカームダウン・クールダウンスペースが設置されていました。上の写真に映っていますが、お分かりになるでしょうか?閉館後にトーハクのご担当者の方とお話させていただいたのですが、私たちが座っている右の水色の柱のような場所が、カームダウンスペースです!

東京国立博物館カームダウンスペース

会場の壁の青に合わせて、カームダウンスペースの扉も青色です! 入口にはカームダウンスペースのピクトグラムと説明が掲示されており、利用を希望する方はスタッフに声をかけてから入室します。ドアには「空室/入室」の札が掛けられており、中に人がいるかどうかはこの札で判断できます。

ただし、中の様子が全く分からないため、利用を希望してもスタッフに声をかけるのをためらってしまう可能性があります。入り口に室内の様子が分かる写真を掲示すると、利用しやすくなるのではないかと感じました。

ドアを開けると、約1畳ほどのスペースにクッションが置かれており、中で休むことができます。ミニテーブルには、イヤーマフ、ハンドスピナー、スクイーズが置かれており、自由に使用できます。

イヤーマフを自由に使えるのはとても良い取り組みです。しかし、ミニテーブルの上にさまざまな小物を置く場合、パニック状態の方が利用することを想定すると、少し危険かもしれません。投げてしまったり、暴れている際に怪我をする可能性があります。

センサリーバッグが用意されているため、道具はバッグに入れたままにし、写真などで使用方法を説明するのも良い方法ではないかと思います。

中に入ってみました!天井は開いており、外の明かりが入るため、完全に真っ暗ではなく適度な暗さです。ただし、座る位置によっては、見上げた際に照明の光が直接目に入るため、少し工夫が必要だと感じました。とはいえ、座る位置を調整すれば、眩しさを感じることなく利用できると思います。

ドア周りで気になった点が2つありました。

1.出口の向きについて

ドアを開けると、明るい広場が目の前に広がっています。私は閉館のタイミングでお伺いしたため人はいませんでしたが、通常は子ども連れの家族で賑わっているため、開けた瞬間に圧倒されてしまう可能性があると感じました。出入り口の向きを広場に直接向けない設置ができると、より落ち着いて利用しやすくなると思います。

対策として、ドアにはカーテンが取り付けられていました。カーテン越しに外の様子を確認してから出ることができればよいのですが、構造上それは難しいように感じました。

2.ドアのタイプについて

現在の仕様では、ドアを開けた際に目の前に人がいると、ぶつかってしまう可能性があります。これも、出入り口を広場に向けないように配置することで解消できる部分です。

設置環境の重要性

カームダウンスペースは、極端に言えば「箱自体が重要なのではなく、どこにどのように設置するか」が鍵となります。この環境調整を適切に行うことが、利用者にとって本当に役立つスペースを作るために不可欠です。そして、それを的確にサポートできるのは、感覚過敏研究所の加藤しかいないのではないかと思っています。(少し大げさに言いました!)

数点、気になる点を書かせていただきましたが、個人的にはとても好きなカームダウンスペースです。このイベント会場自体が遊び心にあふれており、子どもたちは存分に楽しめると思います。そんな中で、少し疲れたときに人の視線を気にせず休める空間は、とても大切だと感じました。

そして、空間にマッチした水色の入り口。「これなんだろう?」と、知らない方も興味を持ってくれるのではないかと思います。

常設ではなく、期間限定のイベントにもかかわらず、これほど立派なカームダウンスペースを用意してくださったことが本当に嬉しいです。ありがとうございます。

同時に、この素敵な空間の存在を知らず、利用できなかった方もいるかもしれません。「いつ、どこでカームダウンスペースが設置されるのか」ーーーーその情報を発信する役割を、感覚過敏研究所が担っていきたいと強く思いました。

↑この空間、最高でしょう!はにわ最高!

おわりに

今回はカームダウンスペースの見学だったため、遊ぶことはできませんでしたが、開放的でとても居心地の良い空間でした。(※そもそも、お子さま向けのスペースのため、大人だけでは利用できません。)

カームダウンスペースが会場内にあること自体が、感覚過敏のあるお子さまを持つ保護者にとって大きな安心材料になるでしょう。カームダウンスペースは、単なる「利用率」では測れません。「そこにカームダウンスペースがあるからおでかけできた。結果として使わなかった」——これこそが理想的な形なのです。

現在、カームダウンスペースはまだ十分に普及しておらず、設置基準も確立されていません。そのような状況の中で、皆さんが試行錯誤しながら、感覚過敏や環境刺激に敏感な方々が安心して来場できるよう工夫を重ねていることに、心から感動しました。。

東京国立博物館では、館内のセンサリーマップを作成・公開しています。また、お子さま向けにセンサリーマップのワークショップも過去に3回開催されており、センサリーフレンドリーな博物館の先駆けとなっていくでしょう。このような取り組みが、美術館や科学館などにも広がっていくことを願っています。

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この記事を書いた人

jiei kato

感覚過敏研究所 所長
加藤 路瑛

自分の困りごとである「感覚過敏」の課題解決に向き合い、2020年1月に感覚過敏研究所を設立。感覚過敏がある人たちが暮らしやすい社会を作ることを目指し、商品・サービスの開発・販売、感覚過敏の研究や啓発に力を注いでいる。所長挨拶はこちらから

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