東京大学・先端科学技術研究センターのカームダウンスペース(導入事例)とセンサリーツアー2025レポート

東京大学のカームダウンスペース

2025年5月末、東京大学・先端科学技術研究センターにカームダウンスペースが常設されました。

設置されたのは、先端研4号館1階のエントランスです。感覚過敏研究所で導入のサポートをさせていただきました。

カームダウンスペース

採用いただいたのは、こちらのカームダウンスペース!調音素材を採用した筐体。外の色はブラック。中はグレーをお選びいただきました。2人用サイズです。

椅子もカームダウンスペース推奨ソファのグレーをお選びいただきました。筐体のの壁はボードのように見えるかもしれませんが、布張りです。ソファも同じ布ですので統一感があります。

内側には調音パネルが内蔵されており、このスペース内で話した声は調音され、外に漏れにくく、また、スペース外と中を騒音計で計測すると10dBは言い過ぎかもしれませんがそれに近い減音が確認できます。

しかし、「騒がしさ」とは、騒音計の数字で測れるものではありません。通常の話し声は60dBあります。ただ、ビルや教室内のザワザワ感、街中の喧騒はデシベルではわからないものです。調音素材は、このようなザワザワ感を抑えてくれますので、数字以上に落ち着いた空間を体験いただけるかと思います。

上の写真の左側は、カームダウンスペース内から天井を見上げたものです。一般的に規格品として販売されている大型カームダウンボックスは消防法の適用を回避するために天井が空いています。こちらはフェルト素材でルーバーのようになっています。

真上に照明があると、ボックス内にも光が降り注いで明るくなってしまうので、設置場所も重要なポイントです。

また、写真右はボックス内からロールカーテン越しに見た外の様子です。明暗によって、外にいる人から中にいる人は透けて見えることはありませんが、中から見ると透けて見えます。設置向きなどで調整もできるのですが、東京大学・先端研では人通りに面しているので、中で休む方が少しばかり落ち着けない可能性があります。(遮光ロールカーテンへの変更を相談できればと思っております)

カームダウンスペースに用意できればよいもの

カームダウンスペースだけでは、遮光や遮音を完璧にすることは難しいです。そのため、イヤーマフをカームダウンスペース内や付近に置き、必要な人が利用できるようにしておくことも1つのやり方です。感覚過敏研究所では上記左の写真のような「センサリーバッグ(センサリーフレンドリーキット)」をおすすめすることもあります。

今回はイヤーマフの貸し出しのメンテナンス(イヤーマフのクリーニングなど)の課題を考え、右のような耳栓のディスペンサーを提案させていただきました!下に回転式のダイヤルがあり、回すと耳栓が出てくる仕組みです。これなら、衛生面も安心です。(耳栓用のゴミ箱を周囲に用意する必要があります)

また、設置場所によってはセンサリートイやフィジェットトイ、加重ブランケットなどを用意することによって、利用者がさらに落ち着けるようになることもございます。

どこに置くかを考える

カームダウンスペースは本来の目的を果たすならば、誰も通らない静かな場所に設置されることが望ましいです。しかし、その場に行くまでに時間がかかったり不便なら、誰も利用しない設備になってしまいます。

そもそも、カームダウンスペースの存在を知らない人の方が多い状態です。今回は、東京大学・先端研のご担当者と相談して、あえて人通りの多いエントランスに設置しました。

東京大学・先端科学技術研究センター4号館1階エントランス

1階エントランスフロアに設置することによって、カームダウンスペースを認知していただくことを最初のテーマとさせていただきました。カームダウンスペースは、目に見えない感覚の困りごとがあることを知っていただく啓発装置でもあるのです。

「東京大学の先端研にはカームダウンスペースがある」と学生さんを中心に多くの人に知っていただけた後は、静かな場所への移動も検討できればと思いますし、増設もありでしょう。このような実証実験に近い試みにも取り組んでくださる東京大学・先端研の存在はありがたいですし、東京大学にあるというのは、他の大学への影響も大きいことでしょう。

カームダウンスペースはできることから

東京大学もカームダウンスペース購入を即決されたわけではありません。前年の2024年の東大・駒場リサーチキャンパスでは、空き部屋を利用してカームダウンルームを用意いただきました。

東京大学・駒場リサーチキャンパス2024のカームダウンルーム

昨年のレポート
https://kabin.life/column/10036/

このような前年度の取り組みを経て、2025年度に常設に動かれています。導入を検討される方は、大型のカームダウンスペースを購入する予算に悩まれることもあるかもしれませんが、まずは試しにできる施設や備品で取り組んでみることも大切です。

参考

今回、導入いただいたカームダウンスペースの詳細はこちらから。
https://kabin.life/service/calmdown/conbox-cd/

センサリーツアーのレポート

カームダウンスペースは、東大・駒場リサーチキャンパス2025に合わせて導入をスタートさせました。また、昨年のリサーチキャンパスに引き続き、2025年も感覚過敏研究所で「センサリーツアー」を担当させていただきました。

センサリーツアーとは、施設内や街を五感を使って音や光ニオイなどを感じていただくワークショップです。

カームダウンスペース前が集合場所です。予約不要、当日自由参加なので、事前に何人来てくださるか全くわかりません。そしてこの日は、雨風が強い日だったのです。

天気の悪い中、20名の方がご参加いただきました。感覚過敏やカームダウンスペースの説明を行い、まずはカームダウンスペース内を体験いただき、照度計や騒音計も使って環境測定も行っていただきました。

この後、外に出ましたが、雨が降っており、ツアーで行ける場所が限られてしまった点が残念です。

参加くださった方々が、それぞれいろいろなお立場からセンサリーツアーに興味を持ってくださっており、とても嬉しく思いました。みなさんと一緒に五感にやさしい社会を目指して行けたらと思います。

センサリーツアーは白地図とセンサリーマップステッカーをお渡しして実施しました。

現在、感覚過敏研究所では広域型のウェブ版センサリーマップ「Calmspot」を開発しています。先端研でもCalmsotを利用したセンサリーツアーも実施できたらいいなと思っています。

センサリーマップ「Calmspot」
https://calm-spot.com/map

この記事を書いた人

jiei kato

感覚過敏研究所 所長
加藤 路瑛

自分の困りごとである「感覚過敏」の課題解決に向き合い、2020年1月に感覚過敏研究所を設立。感覚過敏がある人たちが暮らしやすい社会を作ることを目指し、商品・サービスの開発・販売、感覚過敏の研究や啓発に力を注いでいる。所長挨拶はこちらから

カームダウンスペース・カームダウンボックス専門店

カームダウンスペース専門ストア
https://kabin.life/service/calmdown/

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