東京国立博物館のカームダウン・クールダウンスペース(レポート)

東京国立博物館は、これまで、センサリーマップの作成や、こども向けイベントでのセンサリーツアーの実施やカームダウンスペースの用意など、国内ではセンサリーアクセシビリティにおいて先進的に取り組まれている博物館です。

今回はカームダウンスペースの常設に向けて、博物館内に2ヶ所設置されたカームダウン・クールダウンスペースを紹介します。



この記事を書いた人

jiei kato

感覚過敏研究所 所長
加藤 路瑛

自分の困りごとである「感覚過敏」の課題解決に向き合い、2020年1月に感覚過敏研究所を設立。感覚過敏がある人たちが暮らしやすい社会を作ることを目指し、商品・サービスの開発・販売、感覚過敏の研究や啓発に力を注いでいる。所長挨拶はこちらから

常設に向けた東京国立博物館のカームダウン・クールダウンスペース

カームダウンスペースは、正門を入って正面にある本館に設置されています。

設置箇所は2ヶ所。場所は以下のマップでご確認ください。

重要文化財に指定されている本館に入ると・・・・大理石の厳かな階段が目の前に!階段を正面にして左右の場所にカームダウン・クールダウンスペースがあります!(建物の構造や材質の影響もありますが、このエリアは音の反響は大きいエリアですし、来場者も多い場所です)

写真:東京国立博物館ホームページより

正面向かって左手にあるカームダウンスペースの紹介

白いパーテーションが置かれており、その横に「カームダウン・クールダウンスペース」の案内表示が掲示されています。(この掲示物は、感覚過敏研究所が提供させていただきました)

そして、パーテーションの奥がどのようになっているか写真が掲載されています。これはとても良い運用です。カームダウンスペースの認知度はまだ低いので、中の様子が想像できることで、中を覗くハードルは下がるでしょう。

(パーテーションの白さが多少気になるところではありますが、まずは施設にあるものを使うことは重要です。)

パーテーションの中はどうなっているかと言いますと、ファブリックカームダウンハウスを設置くださっています。(※ファブリックカームダウンハウスは感覚過敏研究所で取り扱っています)

パーテーションを置き、そこに椅子を用意したものをカームダウン・クールダウンスペースとしている施設を見かけますが、感覚過敏研究所ではお勧めしていません。(注:イベントでの設置や初期導入としての取り組みとして、まずはパーテーションからという方法は支持しています)

パーテーションだけですと、天井からの照明を遮光できずに場合によっては眩しい環境になることもありますし、遮音もあまりできません。さらに、誰かに覗かれてしまって落ち着けない・・・そんなケースが少なくありません。

東京国立博物館が導入くださったファブリックカームダウンスペースは、天井があるために暗さを保てます。そして、布製のため布自体が吸音材になっており、中は周囲より減音されています。

そして、パーテーションで二重にすることで、前を通る人との距離をキープし、周囲の目を気にせず出入りができます。カームダウンスペースとパーテーションの組み合わせはとても良いです。

上記写真では、カームダウンハウスの向きがこのようになっていますが、感覚過敏研究所で視察のもと、向きを変更しています。光の入り方やパーテーション越しの見え方などさまざまな環境要因を考慮して調整させていただきました。(変更後の写真を撮り忘れたため、次の機会に撮影してきます)

中の様子も紹介します。ちょうどサイズの椅子(ベンチ)が設置されています。大人2名が並んで座るのは窮屈ではありますが、お子様連れなら並んで座れます。椅子も座り心地がよかったです。また、遮光の感じもお分かりいただけるかと思います。(実際は向きを変えたので、もう少し見え方が違います)

正面向かって右手にあるカームダウンスペースの紹介

もう1つのカームダウンスペースです。同じくパーテーションとファブリックカームダウンスペースの併用です。

中の様子です。広さや暗さが伝わればいいなと思います。

実は先に紹介した正面左手のカームダウンスペースが設置されているすぐ横の部屋には、大きなミュージアムショップがあります。お買い物されている人も多く、賑やかです。対して正面右手のカームダウンスペースは周辺も静かで落ち着いており、カームダウンエリアとしては、こちらの方が刺激は少ないでしょう。

また、中に利用者がいる場合に覗き込まれないように、入り口に「使用中」「空室」の切り替え表示を用意しています。(左右どちらにも用意されています)

視察後のアップデート

視察をさせていただいた後、話し合った内容などをすぐにアップデートくださっていました!(カームダウンスペースの運用は事例も少なく、また設置環境によりますので試行錯誤が必要な状況です。ご尽力に感謝します)

アップデート1

上記のように、入り口の動線がすぐに分かる張り紙をしていただきました!パーテーションで仕切っているため、覗き込んでいいものなのか、入っていいものなのか不安になる方もいらっしゃると思いますので矢印付きで分かりやすくなったと思います。

アップデート2

使用中・空室のカードはご利用者さんご自身にお願いしておりますが、出る時に戻し忘れるとずっと使用中のままになります。本当に空室なのに入っている人がいると思って近づけなくなります。そのため、使用後に空室に戻していただく注意書きも掲示くださいました!

所長・加藤レビュー

東京国立博物館のカームダウンスペースはかなり考慮・配慮されたスペースとなっています。カームダウンボックスとパーテーションの併用は大変理想的な運用方法です。また、多くの設置型カームダウンスペースは消防法の観点から天井が空いていますが、遮光できない課題があります。今回は天井があるファブリックカームダウンを採用くださっているので、遮光も申し分ないです。布の吸音効果も実感いただけるアイテムです。(ちなみに、布地が防炎仕様です)

また、このファブリックカームダウンはパーテーションにできる2WAY仕様で、軽量で移動や収納も簡単にできます。災害時の仕切りやブースに転用できますので、多くの人が集まる施設での設置に適していると思います。

東京国立博物館は、館内のセンサリーマップや環境情報の発信も丁寧に行なっており、国内の先行事例として多くの博物館や美術館などの文化施設や公共施設の参考になるのではないかと思います。

参考:

●センサリーマップ
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2579

●感覚情報コラム
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2587

東京国立博物館
東京都台東区上野公園13-9
https://www.tnm.jp/

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