「だれもが文化でつながるオータムセッション2025」参加レポート

東京都とアーツカウンシル東京が取り組む「クリエイティブ・ウェルビーイング・トーキョー」の一環として開催される「だれもが文化でつながる会議」。

2025年は、「居場所とわたし」をテーマに「だれもが文化でつながるオータムセッション2025」が開催されました。このコラムでは、参加レポートをお伝えします。

この記事を書いた人

加藤路瑛

感覚過敏研究所 所長
加藤 路瑛

自分の困りごとである「感覚過敏」の課題解決に向き合い、2020年1月に感覚過敏研究所を設立。感覚過敏がある人たちが暮らしやすい社会を作ることを目指し、商品・サービスの開発・販売、感覚過敏の研究や啓発に力を注いでいる。所長挨拶はこちらから。

セミナー「カームダウンスペースをつくる」

芸術文化にかかわる活動を行う実践者と研究者や、アーティストが登壇し、さまざまなテーマでセッションが開催されていました。私のお目当ては「セミナー5 カームダウンスペースをつくる」です。

引用:だれもが文化でつながるオータムセッション2025より

佐藤先生(日本大学 理工学部建築学科 )と綿貫さん(東京都自閉症協会 役員)によるセミナーです。(これは、参加するしかない!)

佐藤先生は直接の面識はございませんが、佐藤先生の研究室には、カームダウンスペースについて研究されている方がいらっしゃって、その方とはお話させていただいておりました。綿貫さんは、カームダウンスペースやセンサリーマップなどの知見もあり、お世話になっている専門家のお一人です。

セミナーでは、綿貫さんから感覚過敏の説明や、センサリーフレンドリーな環境提供の大切さを話され、佐藤先生から、今回のイベントで用意した「センサリーキット」「センサリーマップ」「カームダウンスペース」についての説明がありました。

このセミナーの内容はアーカイブで公開されておりますので、興味のある方は↓

佐藤先生は、「カームダウンスペースを作ろうとなったとき、センサリーキット、センサリーマップ、カームダウンスペースの3つが揃っていないと、カームダウンスペースを作っても意味がないのではと思うようになった」とおっしゃっています。完全同意です。カームダウンスペースだけ置いても意味はないとまでは言いませんが、それは箱を置いただけになる可能性があります。

センサリーキット(センサリーバッグ)

会場では、イヤーマフやセンサリートイが展示され、誰もが触れるようになっていました。セミナーでは、「展示だけでなく、貸出もしている」とおっしゃっていましたが、私は気がつきませんでした。センサリーバッグを美術館に提供している私が、貸し出しコーナーに気が付かなかったというのは、情報提供方法に課題があったのではないかとも思います。(単なる見逃しでしたら、ごめんなさい)

そして、展示説明パネルには、展示品の説明とともに、感覚過敏研究所のセンサリーバッグも紹介されています!感覚過敏研究所のセンサリーバッグ、実はたくさんの美術館で採用いただいています!(情報をまとめるページが作れていないので、作成をお待ちください)

センサリーマップ

センサリーマップは会場受付でいただいたチラシの裏面に掲載されていました。光の多い場所、自然光の入る場所は「面」で表示されています。

また、音刺激の強い場所もマップに掲載されています。このセンサリーマップで難しい面は、音刺激をベースにしているため、反響する場所や床の音などが表現しにくい点です。セミナーでも触れていらっしゃいましたが、この建物、音が反響します。そして、床は歩く人の靴音が響きます。聴覚過敏の方にとって、実際は音の大きさ以上に「ざわざわ感」が滞在のポイントになりますが、これを表現できるマップが作れるといいなと思いました。

カームダウンスペース

会場では、カームダウンスペースの体験展示もありました!パーテーションを利用して、天井に布をかけた形ですね!私は、パーテーションのみでつくるカームダウンスペースは、天井の開口の点から、適切ではないと思っています。もちろん、まずは作ってみるという最初のステップとしてはアリだと思っています。しかし、公共的な施設で常設の状態にもかかわらず、パーテーションを使って、それを「カームダウンスペース」と呼ぶのはいかがなものか?と思っています。

少し強めに否定するのは、このようなパーテーションのカームダウンスペースを利用した方々が「これがカームダウン?ぜんぜん落ち着けなかった」という感想を持ち、カームダウンスペース不要論が出てしまうことを危惧しているからです。ですから、見様見真似で作らず、感覚過敏研究所やカームダウンスペースに詳しい人に相談していただきたいです。(実際は、感覚過敏研究所くらいしかないのが現状ですが・・・)

入り口に中の様子がわかる写真を掲示するのも大切です。(私も運用アドバイスでお伝えすることが多いです)そして、センサリーキットの貸し出し!先ほども書きましたが、カームダウンスペースでは、イヤーマフやセンサリートイが利用できる状況にしておくことも大切です。

使用中かどうかがわかる運用も重要です。しかし、この場所に設置すると、利用後に札を戻すことを忘れてしまうので、忘れない動線を作ることが本来は必要です。この辺の動線づくりも私の得意とするところです。

カームダウンスペースの中はこんな感じです。天井を遮光布で覆っているので、眩しさはいっさいありません。パーテーションのみの場合、このような落ち着いた空間をつくるのは難しいでしょう。

今回、幅90cm、高さ160cmのパーテーションを連結しています。高さは低いので大人の人は腰をかかげて中に入ることになります。全体の広さは入り口を正面にして、幅270cm、奥行き180cm、高さ160cmです。カームダウンスペースとしては、かなり大きい仕様です。

スペース奥は仕切りがあり、奥に1人掛けの椅子が置かれています。どちらを選んでも良い点と、同行者もそばに入れる点が良いです。さらに、椅子の背の壁側、耳の高さあたりに吸音材が貼られています。(こういう細かい配慮が良い!好きです!)

あえて改善点を指摘させていただくと、中に置いてあった照明が眩しい!今回はイベント用に即席で作っているので問題ないですが、常設するような場所では、ぜひ、明るさも調整できるような照明を設置していただきたいです。(照明のON / OFFの選択権が利用者にあることも大切です)

ちなみに私なら、この広さのスペースなら、スヌーズレン機材のサンドボックスを提案します。予算がない場合は、こちらのミニセンサリールームライトかな?

廊下には「カームダウンスペース」「センサリーマップ」「センサリーキット」の説明ポスターも掲示されていました。

「カームダウンスペース」のポスターには、180cm四方にした場合や、車椅子の人が出入りしやすい形状、2ブースにするパーテーションの使い方なども紹介されています。イベントでは、設営に大量のパーテーションをレンタルして、その一部でカームダウンスペースを作る場合もあるでしょう。私も、当日会場入りしてパーテーションでカームダウンスペースを作ってほしいという依頼をいただいたこともあります。もう少し、イベント時のカームダウンスペースの要件を整理して、感覚過敏研究所で情報提供できるようにしたいと考えています。

所長・加藤レビュー

美術館などの文化施設のアクセシビリティを担当する方や、建築や空間デザインの専門家が集まり、よりよい芸術鑑賞体験を目指す素晴らしい場だと感じました。

今回、私は、カームダウンスペース、センサリーマップ、センサリーキットという自分の専門分野だけを見ましたが、本来はもっと多様な課題を学び、総合的な知見を持った上で、センサリーフレンドリーな取り組みを考えたほうが良いと思っているので、もっと学びたいとも思っています。

そして、施設やイベント会場でセンサリーアクセシビリティを考える際には、カームダウンスペースを置くだけではなく、センサリーマップやセンサリーバッグの提供も同時に行うことが重要であると述べてくださった点も良かったと思っています。

現在、カームダウンスペースを設置したいとお問い合わせくださる方には、出来る限り、センサリーバッグやセンサリーマップの提案もさせていただいております。これを伝え、社会実装できるのは、この領域で活動する私の役目だと改めて思いました。

実際に、カームダウンスペース、センサリーマップ、センサリーキットを用意する過程をセミナーという形で見せてくだっさった素晴らしい取り組みでした。

イベント概要

・期間:2025年10月20日(月曜日)~2025年10月23日(木曜日)
・会場:自由学園明日館
・主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
・イベントリンク:https://creativewell.rekibun.or.jp/creativewell-conference/2025.html

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注)当記事は日本社会に向けて、クワイエットアワー、センサリールーム、カームダウンスペース、センサリーマップ、センサリーフレンドリーな商品の重要性をお伝えするものです。感覚過敏研究所SDI推進室が取り組んだ実績ではございませんので、ご了承ください。

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