外出するときにイヤーマフ等を着用している聴覚過敏の方は多いです。歩いて移動するときだけでなく、自転車に乗るときにもイヤーマフ等を着用したいと考えている方もいるかもしれません。 感覚過敏研究所が運営する感覚過敏当事者コミュニティ「かびんの森」でも、自転車で利用していいのか相談の投稿がありました。
今回は、聴覚過敏対策としてイヤーマフ等を着けて自転車に乗ることが違反になるかどうかを解説します。
自転車乗車時のイヤホン着用に関する条例について
多くの自治体で、安全のために、条例で自転車に乗りながらイヤホンで音楽を聞くなどの行為を禁止しています。車が走ってくる音やクラクション、緊急車両のサイレンが聞こえなくなる可能性があるためです。
自治体によって表現は様々ですが、安全のために、イヤホンで音楽を聞くなど、周囲の音が聞こえない状態での運転を禁止しています。
■高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令を受信する場合にイヤホーン等を使用するときは、この限りでない。
(東京都道路交通規則 )
■大きな音量で、カーラジオ等を聞き、又はイヤホン等を使用して音楽等を聞くなど安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令等を受信する場合は、この限りでない。
(愛知県道路交通法施行細則)
■警音器、緊急自動車のサイレン、警察官の指示等安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような音量で、カーオーディオ、ヘッドホンステレオ等を使用して音楽等を聴きながら車両を運転しないこと。
(大阪府道路交通規則)
感覚過敏研究所の見解
聴覚過敏の方は、人混みなどの騒がしい環境や、車のクラクションなど予測できない音が鳴る環境に長時間いることが難しく、普段からイヤーマフ等で音を防いでいることも多いです。中には、歩いているときと同じように、自転車に乗車した際にも、イヤーマフ等を着用したいという方もいるでしょう。
しかし、イヤーマフ等を着用すると周囲の音が小さく聞こえるため、多くの自治体の条例で定めている「周囲の音が聞こえない状態」にあたる可能性があります。特に、遮音性能の高い製品では、近くにいる人の話し声がよく聞こえないくらい遮音されることもあり、そのような場合は特に危険が伴います。
自転車乗車時にもイヤーマフ等を着用したい場合、近くの警察署で相談し、車が走ってくる音やクラクション、緊急車両のサイレンが聞こえる程度で遮音する製品をお使いになることを推奨します。
イヤーマフではなく、耳栓やノイズキャンセリングイヤホンなどを使用したい場合にも、警察にご相談ください。イヤーマフと比べて、ヘルメットが着用しやすくなりますが、耳栓やノイズキャンセリングイヤホンは音楽を聴いていると誤解されやすいかもしれません。
また事前に相談して問題ないことを確認した場合にも、イヤーマフ等を着用していると、それを知らない警察の方に呼び止められる可能性はあります。その際には、イヤーマフ等を着用している理由と、事前に相談済であることを伝えることが重要です。
「かびんの森」メンバーの事例
感覚過敏の当事者や家族が集まるオンラインコミュニティ「かびんの森」にて、聴覚過敏対策のイヤーマフを着用して自転車に乗るのは違反かどうかが話題になり、メンバーの方が警察に聞きに行ってくれました。
聞きに行ってくれたメンバーの方の自治体では、聴覚過敏対策のイヤーマフを着用しても、音が聞こえるのであれば問題ないとのことでした。繰り返しになりますが、住んでいる自治体によって対応が異なるため、イヤーマフを着用したい方は事前に警察に相談することを推奨します。ただし、相談した担当官がOKだと言っても、他の警察官はダメという見解の場合もあります。警察や自治体としての回答かどうかも確認してください。
感覚過敏研究所でご提案できること
聴覚過敏対策のイヤーマフ等をつけて自転車に乗るときに、オススメの商品を紹介します。
聴覚過敏シール(苦手な音があります)
感覚過敏研究所で販売している、イヤーマフの側面に貼れる「聴覚過敏シール」を貼ることによって、なぜイヤーマフを着用しているのか分かりやすくなります。側面が湾曲しているタイプのイヤーマフの場合、上手く貼れないことがあるので、事前にお確かめください。
聴覚過敏缶バッジ(苦手な音があります)
感覚過敏研究所で販売している、バッグなどにつけられる「聴覚過敏缶バッジ」をつけることにより、なぜイヤーマフ等を着用しているのか分かりやすくなります。
聴覚過敏マーク ダウンロード版
感覚過敏研究所では、シールや缶バッジだけではなく、聴覚過敏マークのデータを販売しています。個人使用であれば、紙に印刷して利用したり、グッズの作成も可能です。
FaretoQe(ハレトケ) イヤーマフ
イヤーマフといっても、商品によって防音性は様々です。感覚過敏研究所では、周囲の音を最大25dbまで軽減できる、FaretoQe(ハレトケ)のイヤーマフを販売しています。完全に遮断するのではなく、外の音が少し聞こえる程度なので、自転車に乗る際も周囲の音は聞こえやすく安心です。