感覚過敏に対して作業療法士として関わるということ

感覚過敏に対して作業療法士として関わるということと

子どものウェルビーイング実現に取り組む作業療法士の方喰醇(かたばみ じゅん)です。

作業療法士とは国家資格をもったリハビリテーションの専門職です。人の日常生活に関わるすべての活動である「作業」に焦点を当て、その人がその人らしく健康や幸福を感じられるように支援する職業です。

作業療法ってなんですか?
作業療法ってなんですか?(日本作業療法士協会より)

日本作業療法士協会HPより引用
https://www.jaot.or.jp/files/page/kankobutsu/pdf/21_pamphlet.pdf

感覚過敏と発達障害

皆様は、感覚過敏と発達障害(神経発達症)の関係性についてご存知でしょうか?
しばしば、発達障害のある人に感覚の問題が併存していることが報告されています。

●国立障害者リハビリテーションセンターHPより引用
http://www.rehab.go.jp/ri/departj/brainfunc/dds/paper/topic3/


感覚の問題自体は症状の一つであり、必ずしも発達障害があるからといって感覚の問題がみられるわけではありません。

しかし、発達障害がある人が日常生活を送っていく上で生活しにくく感じる原因となることがあり、専門的な支援が必要とされております。

感覚過敏がある子どもと作業療法

私は病院に所属する作業療法士として、発達障害を関係因子に持つ感覚の問題のある子ども達に多く関わってきました。
感覚に関する問題は聴覚や視覚、触覚などの五感に限らず、前庭覚や固有受容覚、感覚と運動の複合的感覚や感覚処理に対する情動反応の問題など幅広くみられています。そのような感覚に関する問題を詳細にとらえるためには専門的な知識が必要になってくるため、専門家との連携が必要不可欠と考えます。

感覚プロファイル(Sensory Profile)

私が所属する病院では感覚プロファイル(Sensory Profile)を使用し評価を行い、その結果をご家族様及び本人と共有し対応策を検討しております。

●日本文化科学社HPより引用
https://www.nichibun.co.jp/seek/kensa/sp.html

感覚に関する問題には感覚過敏だけでなく、「低登録」「感覚探求」「感覚回避」などタイプが分かれております。その支援策には決まった正解はなく、保育・教育を受ける環境による違いや受けられる支援の限界などを配慮しながら個別性を重視した支援を模索していく必要があります。


「医学モデル」と「社会モデル」

そのため、私たち作業療法士は医学的側面だけに囚われずに「医学モデル」と「社会モデル」を統合した知見を活かした支援を提供しております。

主にICF(国際生活機能分類)という生きることの全体像について共通で考えることのできるモデルを使用して各所と支援内容を情報伝達しております。

●厚生労働省HPより引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002ksqi-att/2r9852000002kswh.pdf


センソリーダイエット

具体的な支援内容を例としてあげますと、感覚過敏がある子ども達に対してはセンソリーダイエットを行っております。

センソリーダイエットとは、「子どもが必要としている刺激をあらかじめ生活スケジュールの中に組み込んで取り入れられるようにしたり、不快刺激を排除したりして、行動や情緒の安定を図る方法」です。
(岩永竜一郎:もっと笑顔が見たいから 発達デコボコな子どものための感覚運動アプローチより引用)


聴覚刺激に対してはイヤーマフを利用する、視覚刺激に対してはカラーレンズやパーテーションを利用をするなど個別で刺激に対する調整していきます。 そのうえで、情動を安定させるために適切な快反応を得られる刺激を入力する機会を生活の中に落とし込んでいきます。
(例:授業中にバランスボールで跳ねる時間を作ってもらう。プリント回収の係を任せて椅子から離れ歩く機会を提供してもらう。静かで暗い部屋で休憩する時間を設けるなど)

おわりに

感覚に関する問題への対応は未だ理解が不十分な現場が多いと思います。足が不自由な方に対するバリアフリーや目が不自由な方への点字ブロックなど社会の中には当たり前の支援として定着してきているものがあります。そのような配慮と同様に感覚に関する問題も当たり前の配慮としていく流れが必要だと考えます。

そのためにも、感覚に関する問題を周囲の人に正しく理解してもらうことが最重要事項だと考えます。専門家と家族、教育現場などの連携を深めていき、個別性に合わせた支援を行えるような社会づくりをしていきましょう。



この記事を書いた人

作業療法士
方喰醇(かたばみ じゅん)

国際医療福祉大学・大学院修士課程卒業。国際医療福祉大学病院リハビリテーション室に勤務中。子どものリハビリだけでなく地域検診や保育園、学校支援にも取り組んでおります

感覚過敏研究所でできること

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    感覚過敏缶バッジをはじめ、感覚過敏研究所オリジナル商品、KANKAKU FACTORYブランドの衣類をオンラインストアで販売しています。また、感覚過敏の方におすすめしたい商品や五感にやさしい商品を感覚過敏研究所セレクトアイテムとして紹介・販売しております。

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    感覚過敏の当事者やその家族、そして感覚過敏応援団メンバーさんが参加できる「かびんの森」という感覚過敏コミュニティを運営しています。2020年1月にスタートし、現在は1,000名の当事者やご家族が参加しています。(2023年9月現在)

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    感覚過敏缶バッジ

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    触覚の過敏さで生地や服の縫い目、タグに痛みや不快感のある方のために、アウトシーム(縫い目外側)・タグなしをコンセプトにした衣類の開発・販売をしています。

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    感覚過敏研究所では感覚過敏の課題解決のためにイノチグラスのカラーレンズを取り扱っています。人によって眩しくないレンズの色は違います。レンズ測定はイノチグラスのカラーサポーターでもある所長・加藤が担当します。

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