感覚過敏という概念について(感覚過敏研究所の意見・見解)2021年7月更新

こんにちは。感覚過敏研究所の所長、加藤路瑛です。所長と名乗っていますが、13歳の時に感覚過敏研究所を立ち上げ、現在は高校生です。僕は感覚過敏の当事者であり、感覚過敏の課題解決のために日々奔走していいます。

感覚過敏研究所は3つの軸で動いています。

  1. 感覚過敏の啓発
  2. 感覚過敏のための商品・サービスの企画・開発・製造・販売
  3. 感覚過敏の研究

です。この3つの軸で僕は行動しています。誰よりも感覚過敏の課題解決に時間とエネルギーを注いでいるつもりですが、感覚過敏に関する専門性を大学などの学歴や職歴、研究実績で問われれば、まだ専門家とは名乗れません。ここから何年もかけて、感覚過敏に関する様々なことに取り組み、感覚過敏の専門家といえば加藤路瑛と言われるような人物になりたいと思っています。

「感覚過敏」という言葉はまだ一般的に知られている言葉でもないですし、概念でもありません。ただ、感覚過敏研究所を設立して以来、メディアなどで多く取り上げていただいたり、発信することで「感覚過敏」という言葉や存在を知ってくださる方が増えたと感じています。

インターネットで「感覚過敏」について調べると、色々な考えの方がいることもわかりましたそこで、まずは僕の、そして感覚過敏研究所としての考えを伝えておきたいと思います。

感覚過敏は病気なのか?

感覚過敏とは五感(目・耳・鼻・口・皮膚の感覚)に敏感な状態を表します。敏感さは人によって違うので、他人が判断できるものではないと思います。

ですから、感覚過敏があることで、困っている状況があるかどうかが重要になってきます。

感覚過敏は病気ではなく、「症状」や「状態」だというのが僕の考えです。

感覚過敏があっても耐えられる人もいます。日常生活に支障が出たり、体調が悪くなる人もいます。ですから、感覚過敏を特別視するのではなく、感覚過敏があることでおこる困りごとにフォーカスしたいと僕は考えています。

感覚過敏は治せるのか?

感覚過敏は様々な原因で起こります。病気や障害によって起きている場合は、その病気を治療したり薬を飲むことで改善されたり、治ることもあるそうですが、感覚過敏そのものを治す薬はありません。

「感覚過敏は薬で治せます」と感覚過敏で悩んでいる人に薬を勧める人がいらっしゃいます。治ったのはご自身のケースであって、他人が薬で解決できるかは分かりません。参考にお話しされることはとても意義のあることだと思いますが、薬を飲まない人を否定する人が少なくないことが、感覚過敏のことを調べて気になった点の1つです。

僕もまだ勉強中ですが、感覚過敏を楽にする薬ができるなら開発したいと思っています。

感覚過敏があると発達障害なのか?

感覚過敏の話をすると「結局、発達障害なんでしょ?」という考えの人がいるように思います。発達障害の人もいるし、そうではない人もいるというだけのことだと思います。確かに感覚過敏は発達障害の方に多く見られる症状です。発表されている論文では、発達障害の95%に感覚過敏があるとも言われています。ただし、感覚過敏があるから発達障害だとは言えず、逆に、発達障害だから感覚過敏があるとも断定できません。

さらに、感覚過敏は、うつ病や認知症、脳卒中、てんかん、高次脳機能障害など脳の疾患にも見られる症状です。ですから、「感覚過敏イコール発達障害」というわけではないというのが感覚過敏研究所としての見解です。

そもそも発達障害とは?

その前に、僕の発達障害に関する考え方も表明しておきます。正直に言えば、発達障害が何なのか僕にはよくわかりません。

個性や特性と発達障害の違いは何なのでしょうか?どこに区切りがあるのでしょうか?誰が決めるのでしょうか?その判断は正しいのでしょうか?

僕自身は発達障害の診断を受けたことはありませんが、文章を読むのが苦手ですし、字を書くのも苦手です。部屋は汚いです。感覚過敏があります。発達障害かもしれませんが、読書が苦手な人や部屋が汚い人、全員が発達障害なわけではないと思います。

結局、発達障害を診断する基準のようなものは不確かだと思うのです。世の中の多くのことは「良いか」「悪いか」とか「好きか」「嫌いか」の2択ではないはずです。極端はほぼなく、全てはグラデーションなのです。そのような曖昧さの中で生きているので、発達障害かそうでないかの2択で判断することは難しいと思います。

それよりも、どんなことに困っているのか、それを解決したり、工夫する方法がないかのかを考えて生活していく方が重要だと思っています。

ですので、感覚過敏に関しても「感覚過敏である」と決めつけるのではなく、その困りごとにフォーカスしたいのです。

感覚過敏の人の主張は正しいのか?

感覚過敏の人は日常生活のなかで苦痛を感じるものが多いです。特に音や臭いはどこにでも存在します。

公害と認定されるような騒音や悪臭の場合、公害を防止するように主張することは必要ですが、これが生活音や生活臭いですと相手に主張することは難しいです。

赤ちゃんの声で具合が悪くなるからと言って赤ちゃんに泣くなとは言えません。食べ物のにおいが苦手だからといって、他の人に食べないでくれとは言えません。香水が苦手だからといって、他人に香水つけるなとは言えません。

言えないというより、僕は言ってはいけないと思っています。

「感覚過敏を持つ人がいて、こんな場所やこんな状況で体調が悪くなる場合があります。そんな人がいることや、感覚過敏というものがあることを知っていてください。」言えるのはこれだけです。

感覚過敏やそれによって快適に暮らせない人がいることを知ってくれた人や企業が、少し工夫を考えてくれたら、それは素敵なことだと思います。

感覚過敏研究所では、社会主張的な活動はしません。やるのは啓発活動と感覚過敏がある人が生活しやすくなる商品やサービスを作ることです。

感覚過敏のない人に行動を制限してもらうような主張はせず、誰もが生きるこの社会の中で、自分たちで工夫して暮らしていきたいです。最終的にはテクノロジーで解決できると思っています。その段階にたどり着くには時間がかかるので、やれることからやっていきます。

まとめ

以上が、2020年7月時点での、感覚過敏に関する僕の意見です。意見は、変わっていくと思いますので、時々、自分の意見を研究所のサイトでも書きたいと思います。

※「障害」の表記方法に関しては様々なご意見がありますが、感覚過敏研究所では、用語として「障害」と漢字表記しています。

こちらの記事もご覧ください

所長・加藤路瑛の所信表明「僕が感覚過敏研究所を立ち上げる理由」

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