カームダウン・クールダウンスペースとは、光や音などの感覚の刺激を遮断することで、感覚過敏によるストレスの軽減やパニックの回避やクールダウンに使用できるスペースです。今回は、羽田空港のカームダウン・クールダウンスペースについて紹介します。
羽田空港のカームダウン・クールダウンスペースについて
このカームダウン・クールダウンスペースは、2020年12月3日に羽田空港の旅客ターミナルを建設管理・運営する会社によって設置されました。
カームダウン・クールダウンスペースは、第1ターミナル、第2ターミナル(国内線)2階 出発保安検査場通過後エリアに設置されており、ご利用の航空会社を問わず、どなたでも予約不要で利用できます。※飛行機にご搭乗のお客さまがご利用いただけるエリアでございます。
感覚過敏当事者が体験レポ!
以下、感覚過敏コミュニティのメンバーの澪標 燈(.3g2)さんが、羽田空港を利用された際に撮影した写真や動画です。また、設置箇所の環境を含めた感想も感覚過敏当事者の視点でコメントいただきました。
羽田空港第2ターミナル保安検査C横のカームダウン・クールダウンスペース(※2024年6月6日より保安検査場B付近に移設済み)
▼カームダウン・クールダウンスペース内での周囲の音
【感想】隣が優先保安検査場とはいえ自動運転車椅子が通ったり、人通りそのものが多いので、カームダウンやクールダウンには繋がりにくいという現状です。 ただ非常に分かりやすい場所にある事は、使用する上で良いと思われます。
羽田空港第2ターミナル保安検査A前(59番横)のカームダウン・クールダウンスペース
▼カームダウン・クールダウンスペース内での周囲の音
【感想】スピーカーの近く、かつ、保安検査場の前に設置されているので、カームダウンには適さない場所かもしれません。 同様に分かりやすい場所にはある為、周知には良い場所であると思われます。
※今回は、「保安検査C横」と「保安検査A前(59番横)」の写真と感想をいただきました。設置場所は変更される場合がありますのでご注意ください。
所長・加藤が羽田空港のカームダウン・クールダウンスペースを視察
2024年6月、感覚過敏研究所の所長・加藤が羽田空港を訪問し、カームダウン・クールダウンスペースを空港に導入したご担当者様と意見交換を行いました。視察時のレポートもご紹介します!視察は羽田空港第1ターミナル出発保安検査場通過後エリアで行われました。
羽田空港第1ターミナル出発保安検査場通過後エリア北側のカームダウン・クールダウンスペース
写真のように、キッズスペースの横にカームダウン・クールダウンスペースが設置されていました。視察時はキッズスペースで遊ぶお子様はいらっしゃいませんでしたが、もし、元気に遊んでいるお子様がいらっしゃったら、少し落ち着けない可能性はあるなと感じました。また、照明の位置、スピーカーの位置との関係で、この場所で音や光から逃れることは難しく感じます。
しかし、パーテーションで区切られており、周囲からの視線を気にせずに休むことができます。搭乗前の保安検査場通過後エリアには椅子はたくさんありますが、オープンスペースであり、影に隠れて休憩する場所を探すのには苦労します。そのため、周囲の視線を気にせず、また視界にいろいろな情報が入ることで疲れたり、パニックになりやすい方には大切な場所でもあります。
※照明やスピーカーの位置が気になる加藤。右写真を見るとわかりますが、座った状態で加藤の頭に照明があたっています。羽田空港のご担当者と一緒にまわっているので、感想はお伝えしています。
羽田空港第1ターミナル保安検査場A横のカームダウン・クールダウンスペース
保安検査場を通過した後に、カームダウン・クールダウンスペースがありました!保安検査場が近くにあるため、人の流れは途切れずありましたが、落ち着いた場所に設置されており、安心して利用できる環境であると感じました。空港内の騒がしさはありますが、周囲の目を気にせず休める点では十分な機能を備えています。
影のある場所に設置されていますが、照明がカームダウン・クールダウンスペースに入り込んでしまうので椅子の位置に工夫が必要そうです。
カームダウン・クールダウンスペースは体験者の声を反映して日々改善を検討されています。スペースには体験者の声を投稿できるQRコードが掲載されており、感謝の声も多く入っているそうです!
視察後は羽田空港のご担当の方々と意見交換をしたり、羽田空港がカームダウン・クールダウンスペースを導入するきっかけのお話をお聞きしました。「おもてなしの心」という言葉に集約できると思いました。空港はさまざまな人が利用されます。ただ、その中には、身体的な障害や特性で、安心して空港を利用できない人がいます。そのような人に、安心して空港を利用できるように、羽田空港は丁寧にさまざまな課題に取り組んでおり、カームダウン・クールダウンスペースもその1つのあらわれだと思いました。
今は、カームダウン・クールダウンスペースを導入する空港も増えてきましたが、早くから取り組んだ羽田空港の思いはしっかりと伝わってきましたし、これからも改善や工夫をして、感覚過敏がある人も安心して利用できる空港に進化してくのだろうなと感じました。これからも羽田空港とは情報交換しながら、よりよいカームダウン・クールダウンスペースや、空港の音環境などについて提案していけたらと思っています。
羽田空港の搭乗前のエリアって混んでいますよね。座る場所がなくて困ることもあります。「カームダウン・クールダウンスペースが他の人が使っていて使えない時は?」とお聞きすると、比較的お客さまが少ない場所を教えてもらいました。静かな場所や人が少ない場所の情報を欲する方もいらっしゃるでしょう。感覚過敏研究所では、センサリーマップの作成もしているので、羽田空港のセンサリーマップを作りたいなと思いました。今後も情報交換できればいいなと思っています。
羽田空港のカームダウン・クールダウンスペースの場所は?
羽田空港のカームダウンスペースは、第1ターミナル、第2ターミナル、それぞれ2か所、以下の場所に設置されています。
【第1ターミナル2階】
・A検査場付近
・17 番搭乗口およびキッズコーナー付近
【第2ターミナル2階】
・A検査場付近
・B検査場付近
(地図上では小さくて場所がわかりにくいので、赤いマークをつけました。)
また、ヘルプマークとカームダウン・クールダウンスペースのピクトグラムが設置してあり、館内情報を伝えるタッチパネルでも紹介されています。
写真・動画提供:澪標 燈(.3g2)※かびんの森メンバー(写真は2022年11月撮影当時のもの)
所長・加藤路瑛のレビュー
バリアフリー改正法のもと、公共機関、特に空港施設は感覚特性に配慮したカームダウン・クールダウンスペースの設置が進んできている印象です。
カームダウン・クールダウンスペースの難しい点は、人通りのない静かな場所に設置すれば、人にその存在を知ってもらえないことです。逆に言えば、気がついていただけるようにわかりやすい場所に行けば、カームダウンにはならない騒がしさの可能もあります。
静けさをとるか、アクセスのしやすさをとるかの悩ましい選択です。
上の写真は、羽田空港第1ターミナル2階、A検査場付近に設置されたカームダウン・クールダウンスペースの写真です。壁側に置かれていますので、このエリアの刺激でパニックが起きた場合の避難所としては十分だと思います。周囲の目から解放されることも大切だと思います。
カームダウン・クールダウンスペースというものは日本特有のものです。海外の空港では、ラウンジのような大きなセンサリールームが用意されているケースがあります。簡易のボックス型は手軽に設置できますが、中に入る心理的ハードルも高く、安全性なども不安視する声もあります。センサリールームが普及するための1ステップとして、重要な役割を担ってくれるとも思っていますので、これからもカームダウン・クールダウンスペースの動向にも注目です。
感覚過敏研究所でも、カームダウン・クールダウンボックス設置のご相談を承れますので、お気軽にご連絡ください。
引用/参考先
羽田空港「2F 出発ロビー(国内線)・到着ロビー(国際線)」
文:いうと/加藤路瑛
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