センサリールームを大学に導入したい方は必見!筑波大学「アクセシブルスタディルーム」体験レポート

筑波大学センサリールーム

茨城県つくば市にある筑波大学の「アクセシブルスタディルーム」を訪問してきましたので、その体験レポートを紹介します。(2023年8月に訪問した際の情報をベースにしております)

アクセシブルスタディルームとは?

画像引用:筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局(BHE)

筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局(BHE)が実施している障害学生支援の1つとして取り組まれている学習・休憩スペースで、「アクセシブルスタディルーム」と呼ばれています。

アクセシブルスタディルーム設置の経緯

大学では発達障害のある学生が増加しており、なかでも、自閉スペクトラム症(ASD)のある学生では感覚の過敏性のある学生も少なくありません。

また、オンライン授業が行われるようになり、発達障害に限らず、視覚や聴覚に関して疲労や過敏性を感じる学生もいます。なかには、感覚の課題により、本人の知的能力に問題がなくても、学習困難になることもあります。

ですが、教室などの大学の学習環境では、多数派(マジョリティ)に合わせた学習環境で設計されている場合も多く、多様な感覚のある学生に対して個別にカスタマイズできるような環境設計の取り組みは行われていませんでした。

そこで、障害科学を専門とする筑波大学人間系と、デザインを専門とする筑波大学芸術系の教員や学生と共同プロジェクトチームを2019年12月に結成し、国内外で取り組まれているセンサリールームを参考にしながら、「個人の多様な感覚特性に応じてカスタマイズできる1人用学習・休憩室」を考案しました。

2021年7月に、共同自習室と1人用学習・休憩室の2室で構成される「アクセシブルスタディルーム(Accessible Study Room)」が完成しました。

障害のある学生を中心に、個々の学生がそれぞれの好みや心地よさに合わせてカスタマイズしながら、自分にとって快適な感覚の環境を探し出し、自身の学習環境の構築に役立てられるようにしております。

引用:筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局アクセシビリティ支援チーム

2つのアクセシブルスタディルーム

アクセシブルスタディルームは2つの部屋に分かれており、「共同自習室」と「1人用自習・休憩室」の2種類あります。

共同自習室

画像引用元:筑波大学アクセシブルスタディルーム

学習塾の自習室とよく似た学習室です。間仕切りのある机が設置されており、注意が散漫にならないような配慮がされています。昨今の情勢で盛んに行われているオンライン授業にも対応しており、無線LANを利用することができます。3人まで同時利用ができます。なお、この部屋では学生が勉学に集中できるよう、イヤーマフやデジタル耳栓等、勉学に集中するのに必要な物品の貸し出しがされています。貸し出されている物品の一覧はこちら

1人用自習・休憩室

画像引用元:筑波大学アクセシブルスタディルーム

こちらは共同学習室とは異なり、1人で利用するための部屋です。授業で疲れた気分を落ち着けたり、最適な環境に自分で調節して勉強に集中したりすることができます。

部屋には勉強机のほか、ベッド、感覚を落ち着けるための道具、利用者は部屋で流れる音、部屋の色を自由にカスタマイズできます。また、土足厳禁の部屋でもあるので、カーペットに寝そべることもできます。

利用対象者は?利用方法は?

BHEを利用する学生が使用できる学習・休憩スペースです。発達障害の診断や傾向のある学生に限らず、他の障害のある学生も利用できます。

1人用自習・休憩室のASルームは1人でも心地よく利用できるように、完全予約制になっています。利用する際は、専用の予約サイトを通じて使用する日時を予約する必要があり、1回90分までの時間制限が設けられてます。

アクセシブルスタディルームを体験

感覚過敏研究所の所長・加藤が体験してきました。体験レポートとともに、私の感想や意見なども同時に掲載していきます。

筑波大学センサリールーム
写真:感覚過敏研究所

部屋は結構な広さで20畳くらいはあったと思います(加藤の主観による推測数字)。部屋の奥には、テーブルと椅子とテントが置かれていました。写真の時はテントの中に椅子入れて休憩体験もしてみました。部屋が広いため、狭い空間が安心する人にとってはテントがあるのは安心です。

写真:感覚過敏研究所

部屋の照明の色は自分の好みの色に変えることができます。もちろん、このような色の照明を使わず、通常の室内灯を利用することもできます。

今回、筑波大学では「アクセシブルスタディルーム」と呼んでいますが、いわゆるマルチセンサリールームです。センサリールームの大切なポイントの1つは、「自分が心地よいと思う環境で過ごせること」にあります。ですから、室内の照明の色を自由に変えられることはとても大切なことです。

写真:感覚過敏研究所

そして、この部屋、ベッドがあるのですよ!学校の保健室のようですよね。周囲を気にせず、体を横にできる場所があることは、障害がある方や持病がある方にとっては安心です。ずっと寝ていたくなりますが、ASルームは90分という時間制限を設けているので、その点はしっかり運用を考えられていると思いました。

さらに、写真の左手に見えるもの、ご存知でしょうか?これはスヌーズレンとかバブルタワーと呼ばれるものです。スヌーズレンは知的障害の方々の余暇として発祥したものですが、現在は障害のある方々のリフレッシュや癒しの部屋のアイテムとして導入されています。

筑波大学のアクセシブルスタディルームは、照明を自由に変えられる仕組みを導入しているので、バブルタワー自体は少しばかり過剰ではあります。バブルタワーも好みの色に設定できますが、オートになっていると色が少しずつ変化していきます。部屋の照明の色と連動できていなかったので多少、調和が取れない色になることがありました。

また、バブルタワーは泡の音やモーター音がありますので、ベッドの耳元の位置に設置するのは少し検証が必要かと思いました。バブルタワーも好みによって使わない選択肢もあります。ですから、そのように、自分が快適になるように環境を調整できるように選択肢を用意していることがとても重要だと思います。

所長・加藤のレビュー

写真:感覚過敏研究所

「こんな施設が大学にあったらうれしい!」が詰まっているルームでした。この部屋の導入には発達障害のある学生や障害学やデザインの先生などたくさんの人が意見を出し合って作っている点がとてもいいなと思いました。

同時に、このような素晴らしい施設が、ヒューマンエンパワーメント推進局に登録している障害や病気のある学生しか利用できない点はもったいない部分でもあります。センサリールームやカームダウンルームは社会的な認知度がない状況ですので、現時点で一般公開してしまうと、間違った利用方法をされる可能性があります。ですから、現状においては対象者を限定することは重要だと思っています。しかし、社会的な理解が広まったときには、障害の有無に限らず、「クールダウンしたい」なと思った学生さんが誰でも使えるようなインクルーシブな施設になってほしいなと思っています。

1点だけ、私だけかもしれませんが、「アクセシブルスタディルーム」という単語がなかなか覚えられません。私はセンサリーアクセシビリティの取り組みもしており、アクセシビリティという単語には馴染みがある人間ですが、なぜが「アクセシブルスタディルーム」という単語が出てこないのです。いつか、みなさんに愛される呼びやすいルームの愛称も考えていただけたらいいなと思いました。

私は、各地に仕事で行く場合に、その付近にある大学の学生支援課に連絡をして「お近くに行くので情報交換しませんか?」と提案させていただいています。どの大学の学生支援課の先生も筑波大学のアクセシブルスタディルームに注目されていました。もちろん、このような立派な部屋を作るのは簡単ではありません。筑波大学も施設改修のタイミングで予算化されていました。

導入方法は?予算は?運用方法は?と担当者なら悩まれることが多いと思いますが、まずは感覚過敏研究所にご相談ください。一緒に最適な方法を考えてきましょう!

ちなみに、感覚過敏研究所では、カームダウン用の個室テントを販売しておりますし、スヌーズレン機材も全て扱っています。国内のほとんどのカームダウンボックスを販売しており、カームダウンスペースやセンサリールームの情報が多く集まっています。お気軽にご連絡ください。

カームダウンスペース・カームダウンボックス専門店
この記事を書いた人

jiei kato

感覚過敏研究所 所長
加藤 路瑛

自分の困りごとである「感覚過敏」の課題解決に向き合い、2020年1月に感覚過敏研究所を設立。感覚過敏がある人たちが暮らしやすい社会を作ることを目指し、商品・サービスの開発・販売、感覚過敏の研究や啓発に力を注いでいる。所長挨拶はこちらから

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