はじめまして、あいこです。大学生として「カームダウン空間(落ち着くための場)」を研究テーマにしています。
私自身も感覚過敏があり、音や光、人の気配などの刺激が重なると負担が増えます。この記事では、日常で「つらい」を減らすために私がしている工夫を、具体例を交えてまとめました。
私の「つらい」は、突然ではなく、積み重なりで来る
感覚過敏があると、つらさは突然爆発するように見えることがあります。
でも実際は、私の場合、「小さな刺激」が積み重なって、ある瞬間に一気に限界に近づきます。
・・・音、光、ニオイ、人の気配・・・
どれか一つが原因というより、いくつも重なると頭の中がいっぱいになって、集中が切れたり、言葉が出にくくなったり、帰宅後に動けなくなったりします。
このコラムでは、私が普段どんなことで困り、どう工夫しているかを、できるだけ具体的に書いてみます。
1. 私が特につらくなりやすい刺激
音:反響と“重なった音”が一番きつい
大きな音そのものより、反響している声、複数人の会話、食器の音、足音などが同時に入ってくる状況がつらいです。
駅や飲食店、広い教室や廊下のように、音が跳ね返る場所だと特に負担が増えます。
「話の内容が聞こえる/聞こえない」の問題というより、音が多いと脳が処理で埋まり、思考の余白がなくなる感じです。
私は小さい頃から、特定の生活音がとても苦手でした。
トイレの水が流れる音、ハンドタオルのこすれる音、花火、ドライヤー、掃除機。
大きさよりも、「突然入り込んでくる」「止められない」音が、体に直接触れてくる感覚があります。
成長してからは、子どもの泣き声も同じようにつらく感じるようになりました。
うるさいというより、音の鋭さや持続がそのまま神経に触れる感じに近いです。
これは一時的なものではなく、昔から変わらず続いている私の反応です。
光:まぶしさと、長時間の白い光
光は、まぶしいだけでなく、長時間浴びるとじわじわ疲れてきます。
蛍光灯や白い照明が続く場所にいると、終わったあとにどっと消耗します。
特に、白い光が視界の中でずっと主張している環境だと、
集中しようとしても気持ちが落ち着かず、あとから頭が重くなる感じが出やすいです。
ニオイ:説明しづらいのに、体調に直結する
ニオイは周りに伝えにくいです。
「におう」と言うのは失礼に聞こえやすいし、本人も我慢しがちです。
でも、香料の強い場所や、消臭剤・洗剤のニオイが強い空間では、頭がぼんやりしたり、気持ち悪くなったりして、集中が落ちます。
私にとってはかなり体調に直結します。
人の気配:近い距離・視線・混雑が重なると消耗する
人が近い距離にいるだけで緊張が増すことがあります。
混雑していて逃げ道がないと、「いつ抜けられるか分からない」こと自体がストレスになります。
特に、後ろに人がいる状態や、視線を意識する状況が続くと、
体は動いていても内側の疲れが早く溜まっていきます。
2. つらさが高まる前の“サイン”
私が「危ないな」と感じるサインは、だいたい次のようなものです。
・頭がぼーっとして、考えがまとまらない
・いつもなら平気な音や光が急に刺さる
・返事が遅くなる/言葉が出にくくなる
・イライラというより、焦りや不安が増える
・視野が狭くなる(周囲の情報がしんどくなる)
ここで一番大事なのは、サインが出た段階で小さく調整することです。
限界まで我慢すると、その後の回復に時間がかかります。
3. 私が実際に効いた工夫
① “全部を良くする”より、いちばんきつい刺激を1つ下げる
理想の環境を作るのは難しいので、私は「今いちばんきつい刺激」を一つだけ下げます。
たとえば、音がきついなら音だけ、光がきついなら光だけ、という感じです。
・音:片耳だけ塞ぐ/イヤープラグあるいはノイズキャンセリングイヤホン/静かな場所に移動
・光:席を変える/目線に入る光源を避ける/画面の明るさを落とす
・ニオイ:換気できる場所へ移動/距離を取る/マスクを使う
100点のつらさを30点にするだけでも、その場で戻れることが増えました。

② “逃げる”ではなく“戻る前提の休憩”を確保する
私は、休憩が「離脱」になるのが怖くて、昔は休めませんでした。
でも、休憩を「戻るための調整」と捉えるようにしてから、むしろ安定しました。
私がよくやるのは
・2〜5分だけ席を外す
・水を飲む
・深呼吸する
・音や光が少ない場所で目と耳を休ませる
・落ち着いたら戻る
「長く休まないと意味がない」と思っていたけど、短い休憩でも十分効くことがあります。

③ “説明コスト”を下げる言い方を用意しておく
つらい時に長い説明はできません。
だから、短い言い方を決めています。
・「少しだけ外で落ち着いて戻ります」
・「今ちょっと刺激がきついので、5分だけ休みます」
・「戻るので、先に進めてください」
これだけで、気持ちがかなり楽になります。

④ 自分の“回復しやすい条件”を把握する
私の場合、回復しやすい条件はだいたい決まっています。
・音が少ない
・光が落ち着いている(まぶしすぎない)
・人の気配が薄い
・ニオイが強くない
・すぐ戻れる見通しがある
この条件に少しでも近づけると、回復が早いです。
4. 私にとっての「カームダウン」
カームダウンというと「別室に行くこと」と思われがちですが、
私にとってのカームダウンは、もっと小さい単位です。
刺激を一段階下げて、戻れる状態にする。
そのために必要なのは、「隔離」ではなく「選べること」だと感じています
・強制されない
・すぐ戻れる
・選択肢がある(暗め/静かめ/人が少ない 等)
・使っていい理由を説明しなくていい
カームダウンの目的が「反省」や「管理」になってしまうと、当事者にとっては怖い場所になります。
逆に、本人の尊厳が守られて、戻り道が確保されていると、カームダウンは安心の道具になります。
5. 家族・支援者の方に伝えたいこと
私が一番助かったのは、解決策よりも先に「つらい」を信じてもらえた時でした。
・「つらいんだね」
・「少し休もう」
・「落ち着いたら戻ろう」
この3つがあるだけで、心身の回復が早くなります。
感覚過敏がある人は、本人なりに頑張っていることが多いです。
だからこそ、「休むこと」を肯定できる環境があると、続けられることが増えます。
おわりに
感覚過敏があることは、日常の中で地味に消耗します。
でも、工夫の仕方が分かってくると、「つらい」の波に飲み込まれにくくなる瞬間も増えます。
この文章が、同じ感覚過敏がある人のヒントになったり、家族や支援者の方が「何を手伝えばいいか」を考えるきっかけになったりしたら嬉しいです。
※本記事は個人の経験に基づく内容で、医療的助言ではありません。強い不調が続く場合は医療機関等にもご相談ください。
参考一覧
感覚過敏については、公的機関でも情報提供が行われています。
・発達障害者の感覚の問題(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
https://hattatsu.go.jp/topics/topic-kenkyu01
(文:あいこ)
