センサリールームとは、音や光、ニオイなどの五感の刺激を少なくし、聴覚・視覚など感覚過敏の症状がある人やその家族が安心して過ごせる空間・部屋のことです。今回はFIFAワールドカップカタール2022で、設置されたセンサリールームを紹介します。
FIFAワールドカップカタール2022で設置されたセンサリールーム
FIFAワールドカップカタール2022では、開幕戦の会場であるアル・バイト・スタジアムや準々決勝が行われるエデュケーション・シティ・スタジアム、決勝戦の行われるルサイル・アイコニック・スタジアム、ドーハ周辺のファンゾーン付近などにセンサリールームが設置されているそうです。センサリールームの設置はワールドカップ史上初のことです。
このセンサリールームは、FIFA World Cup Qatar 2022 LLCおよびFIFAが協力し、カタール財団の支援を受けて、Supreme Committee for Delivery & Legacyにより設置されたようです。利用は予約制で、ほとんどのチケットが売れたと言われています。
例えばアル・バイト・スタジアムのセンサリールームでは、LEDランプによる柔らかい照明を採用しており、ノイズキャンセリングイヤホンなどの貸し出しもあるそうです。
利用方法
このセンサリールームを利用対象者は、知的障害や自閉症、感覚処理障害、精神障害、認知症の感覚を刺激する環境が必要な観客です。利用するには、医師の診断書や健康診断書、または医療専門家の手紙などが必要とされます。
またセンサリールームのチケットを購入すると、同伴者1名のチケットが無料になります。
所長・加藤路瑛のレビュー
ワールドカップ初のセンサリールームとのことです。世界各地のサッカースタジアムでセンサリールームの取り組みが進んでいます。
一例:
【ケーススタディ】アーセナル「エミレーツ・スタジアム」のセンサリールーム
FIFAワールドカップで実施されたことはさらに各国のサッカークラブやスタジアムに影響を及ぼすものだと思います。しかし、このような取り組みが大きくメディアに取り上げられることもなく、知っている一部の方しか利用いただけいないのが現状です。(私がFIFAのセンサリールームを知った時には既にチケットは完売になっていました)
世界中のどの試合でも必ずセンサリールームがある状態が一般化されれば、何かスポーツの試合を見たい時にはセンサリールームがあるず!と調べられる状態になっているのが理想だなと思います。
また、今回は同伴者1名無料ですが、センサリールーム自体は有料であったことも良いことだなと思います。障害がある方々にも観戦いただくようにと社会貢献的な意味合いでのセンサリールームが普及してしまうと、運営する側の負担が大きくなります。継続してサービスが提供されること、一般の人と同じ様にチケット代を支払って、だけとちょっとスペシャルな空間を味わえる。そのように、福祉すぎず、社会にあたりまえにセンサリールームが感覚過敏の人の選択肢になっていければいいなと思っています。
今回、FIFAワールドカップ2022のセンサリールームを導入として、NHK「ゆう5時」(2022年11月30日放送)にて、感覚過敏の特集を組んでいただき、私も当事者のつらさと、センサリールームやクワイエットアワーの必要性をお話しさせていただきました。
五感にやさしい社会を目指して、今後も頑張りたいと思います。
クワイエットアワーを広めたい!
センサリールームやクワイエットアワー、センサリーマップは感覚刺激に強い反応をする方々にとって安心できる空間・時間・ツールです。日本ではまだ浸透していない取り組みです。感覚過敏研究所SDI推進室としても、センサリールームの社会実装に力を注ぎたいと考えております。ご賛同くださる方、ともに社会実装に取り組んでくださる企業様・パートナー様を広く募集しております。
注)当記事は日本社会に向けて、クワイエットアワー、センサリールーム、カームダウンスペース、センサリーマップ、センサリーフレンドリーな商品の重要性をお伝えするものです。感覚過敏研究所SDI推進室が取り組んだ実績ではございませんので、ご了承ください。
引用/参考先
The Japan Times「In World Cup tempest, an oasis of calm for fans with autism」
FIFA「Accessibility takes centre stage as countdown to Qatar 2022 continues」
FIFA World Cup Qatar 2022™ x Qatar Foundation「QF’s Accessibility Initiatives」
文:いうと