【体験談】かびんの森の宇宙人 vol.3 味覚過敏という才能

みなさんこんにちは。感覚過敏研究所ウェブ制作ライターのミノリンです。「かびんの森の宇宙人」は、かびんの森に住む愛すべき我が息子、宇宙人クウのストーリーです。前回は、クウの給食との戦いについてお伝えしました。

私が彼の味覚過敏に気づいたのは、学校に入ってから。クウは未就学時代を、「青空自主保育」で育ちました。「青空自主保育」とは、園舎はなく、里山や海などの自然の中で五感をフルに使って遊ぶ「森のようちえん」のような保育スタイルです。

お弁当もレトルトなどはNG。なので、お弁当は彼の希望でいつもおにぎり2個と、おかずを少々。里山で収穫したむかごやせり、よもぎ、ノカンゾウ、葉生姜、桑の実、梅、漁師さんにもらうワカメ、そんな自然の食材をお母さんたちで料理して一緒に食べたり、里山の中にある畑で野菜を育て、収穫したてを食べたり、田んぼで泥んこになって育てたお米をお餅にしたり。そんなナチュラルライフを満喫していました。

保育者は気づいていた

「クウの舌はすごいね!コックさんになれるよ!」

ある時、保育者にそんなことを言われました。当時の私は、クウにはちょっと食へのこだわりはあると思いつつも、まだ彼の味覚のすごさをわかっていなかったので、「そうなのかな?」と漠然と聞いていたくらいでした。我が家は長男が和食好きでシンプルな料理が多かったせいか、そんなに激しく好き嫌いを感じていなかったからです。嫌いなものは一口も手をつけようとしない点はありましたが。

クウは鮮度にも敏感です。普段の我が家の買い物は近所のスーパーですが、美味しいお肉屋さんで買ったものはすぐにわかります。カレーなど煮込んだら私にはさっぱりお肉の違いなんてわからないのに、クウは「今日のお肉、どこの?」と敏感に察知します。お米も、ちょっとお高いブランド米を買った時はすぐ反応します。

子どもが小さい頃は、なるべく無農薬の美味しいお野菜を選んでいましたが、結構お高いので、成長とともについつい質より量を重視したお財布に優しい野菜を買っていました。最近はクウが自分で食事を作る機会が増えたのですが、そんな時はたいてい自然農法のお野菜をチョイスしてきます。そして私よりも美味しい味付け。でも、料理の道に進む意思は今の所全くなさそうです。笑

そんな彼の味覚過敏が顕著になってきたのは、学校に入ってからでした。前回の記事でも書きましたが、家と違って食べられないものが多く、一口も給食を食べない時もあり、先生から連絡をもらう日々。

おばあちゃんの家に行って、とても美味しい手の込んだ料理を食べても、シンプルが好きなクウは食べることができなくて、「わがまま」「贅沢」「偏食」「親が甘い」・・・そんなことを言われたこともありました。

わがまま?

クウは自分に正直なだけです。

贅沢?

これは、クウとよく話しました。世の中には飢えて亡くなる人がいることも。

「そんなことはわかってる。でも、自分がその国に生まれたのなら違っていたかもしれないけれど、今自分は食べ物がたくさんあるこの国に住んでいる。それを、ほかの国と同じようにしろと言われてもできない。自分が食べられないものをその国にあげることができるなら自分だってそうしている。」

そう言われました。なるほど確かにそうだね。と私も納得しました。私だって、好き嫌いは多少あります。うっかり食材を腐らせてしまうこともあります。それなのに、キレイ事を言ってしまっていたなと反省しました。

偏食?

クウは、鮮度、におい、調理法で食べられなかったりします。トマトは生は食べられますが、調理したものは苦手です。ケチャップは使いません。

ミョウガも新鮮なものは好きですが、スーパーのものは苦手です。同じ料理でも、食材により食べることができないことがあります。特定の食材を選り好みするというわけではないのです。はたから見たら、偏食に思えるかもしれませんが、偏食とはちょっと違うと思っています。

親が甘い?

前回の記事でも書きましたが、残すことを潔しとしない私は、必死に食べられるよう努力しました。有機農法の野菜を使ったり、細かく刻んでおりまぜてみたり。味覚過敏のお子さんを持つお母さんならきっとみなさんそうだと思いますが、一生懸命挑んできたのです。その結果、無理強いすることが心理的にも健康にもよくないことがわかり、本人の意思を尊重することにしたのです。決して甘やかして来たからではないのです。

こんな誤解が、味覚過敏を持つ子の親にはつきまといます。唐辛子がダメな人に、無理やり辛いものを食べさせるでしょうか?別に唐辛子を食べなくても、生きていけます。栄養は色々な形で摂ることができます。どうしても難しい食材があれば、今はサプリもあります。

人気テレビ番組「マツコの知らない世界」で、果物しか食べないで10年間自分を実験台にしてきたという人がいました。10年間果物だけでも、健康にはまったく問題がなかったのだそうです。(ちゃんと検査をした結果)それを見て、「ああ、大丈夫なんだな。」と安心しました。(もちろん個人差はあると思います)

実際、クウは本当に病気をしません。病気で医者にかかったのは、生まれてから数えても片手で足りるくらいです。免疫力が高いのです。周りで水ぼうそうが流行っても、インフルエンザで幼稚園の子のほとんどが休んだ時も、クウは全くうつりませんでした。水ぼうそうは早めにかかってほしくて、水疱を触らせてもらったりハグしたりしたのに。笑

偏食?才能?

クウの叔母は、料理研究家です。彼女は料理という芸術を生み出す芸術家だと、私は思っています。彼女の料理は、丁寧で美しく、幸せな味。時々実家で彼女に会い、食事を共にするときに、祖母からは

「クウは偏食で何を作っていいか困ってしまう」と言われ悩ませてしまいますが、彼の味覚の鋭さを知るクウの叔母は

「スゴイ才能だね、羨ましい。」

と言ってくれます。物事は、見る角度によって捉え方が変わってきます。感覚過敏も捉え方を変えれば、それは普通の人には感じられない優れた繊細な感覚を持っているということ。

周りにどう言われようと、私はクウの味覚過敏を素晴らしい才能だと思っています。食事を作る側としては、大変なことも多いのも事実ではありますが。マイナスの点だけを見ることなく、プラスの意識を持つことでマイナスの点は薄れて小さくなっていくように思います。

生まれ持ったクウの過敏という才能を、ありのまま受け止めて一緒にエキサイティングな人生を享受できたらいいなと思っています。

教育機関に給食や食事の面で相談したい時に使用できる感覚過敏相談シート

親同士で食べない子どもの育児について話し合えるコミュニティー

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