感覚過敏があると病院や歯科医院に行くのも大変です。病院受診の際に相談できる「感覚過敏相談シート」を作成しました。
感覚過敏の方の病院受診でよくあるケース
- 院内の照明や光の出る検査機器や診察・治療で体調が悪くなる
- 院内の雑音や音の出る検査機器や診察・治療で体調が悪くなる
- ニオイや味のある薬剤の塗布や服薬は難しい
- 院内のニオイや医療スタッフの衣服のニオイで気分が悪くなる
- 肌や口腔内に触れる診察・治療が苦手
- 痛みに敏感で注射・採血・手術など痛みがあるものに耐えられない
このような状況になる、または予想されるため、受診をためらい我慢する人もいます。何年も健康診断を受けていない人、どうしても受診の勇気がでず逃げてしまう自分に落ち込んでしまう人。こどもの場合は泣いて嫌がることもあり、親は疲れますし、病院では「これくらい我慢しよう」と言われてしまい、ますます病院嫌いになってしまします。
受診の不安を事前に相談できたり要望を伝えたりできる「感覚過敏相談シート」を作成しました!
使い方
①以下のPDFファイルをダウンロードして印刷します。(A4サイズ)
②シートに相談内容やお願いしたいことを記載します
③受診の際、受付に提出します。問診票の記入があれば一緒に提出します。黙って提出せず、「感覚過敏があり相談シートも見て欲しい」と伝えておきましょう。
利用者さんの声
- 1枚にまとまっていて使いやすかった
- すでに伝えたいことが例として記入されていたので、チェックを付けるだけでよかった
- 子どもの歯科受診で利用しました。痛みや怖さは変わりませんが、一番奥の台にしてもらい、感覚過敏がありながら頑張っていることをスタッフみなさんがわかってくれて、声かけもしてくださり安心できました
- 矯正歯科の相談で使用しました。長時間、器具を装着することが辛いことなどを理解いしてくださった上で、治療方法などを考えてもらえました
- 書いて持参したけど、受付で提出しませんでした。でも、持っているだけでお守りのように安心できました
医療機関の声
- 1枚に簡潔にまとめられていて使いやすい
- 自由記述欄があり柔軟性が高い
- 小児科では感覚過敏の理解も広まってきている。受付で提出いただければ可能な限り要望にこたえたい
シートの改定
相談シートは利用者の声、医療機関の声をお聞きしながら、改定を重ねて行く予定です。
なお、医療機関へのヒアリングに関しては、医学部生で構成される学生団体「inochi 学生プロジェクト」の有志によって実施されています。
inochi 学生プロジェクト
https://inochi-gakusei.com/
感覚過敏の方の要望に答える病院の事例
- 診察を待てないお子さまには、カルテに優先シールというものを用いて、順番関係なく優先して診察している(小児科)
- 感覚過敏で副薬ができてない子には静注(血液に直接いれる)方法をとっている。(小児科)
歯科で考えらえる感覚過敏の患者さんへの対応
情報提供:みき歯科三越通りクリニック
三木武寛先生
視覚過敏
- 室内の灯り(蛍光灯、ライトなど)→間接照明やダウンライトで対応
- 出血を伴う写真や、血の付いたガーゼなど →すぐに片付けるまたは配慮する
- 先端のとがった器具や注射器など →見えないように隠す
- 個室感(壁の色や窓など)→十分な大きさの窓やオープンスペースにする
- 治療台を水平にした時に見える視界(術者の顔や器具)→タオルをかける、アイマスクをつける
- 治療台のライト →術者がライトを装着してなるべく患者の視界に入らないように配慮する、ライト付きの口角鉤で口腔内を直接法で照らす
聴覚過敏
- 室内の音響(スピーカーの位置や音量) →それぞれのユニットで音量調節できるようなシステムを組む、音が患者に直接響かないよう間接音響(スピーカーを壁に向けるなど)を考慮する。
- スタッフの声、あいさつや呼びかけの音量や話し方 →統一感のある接遇
- 他の治療台から聞こえてくるタービンや吸引器の音 →時間をずらす、先に説明する
- 他の患者さん(特に子ども)の泣き声や騒ぎ声など →時間をずらす、状況を説明する
- 治療時の音(吸引器や切削器具、超音波の音) →イヤーカフ、なるべく音が出ないもので対応
- 治療中の先生やスタッフの声かけ →ボイスコントロール法を活用する(声色を変化させることで患者のメンタルを落ち着かせる)
- スタッフの足音 →品格のある接遇、余裕を持った行動
- 滅菌機やバイタルモニターの電子音 →時間をずらす、説明する、音量を下げる
嗅覚過敏
- 室内の臭い(空調の臭いや香水、花の匂いなど) →ニオイの強いものは置かない、空調などはこまめにクリーニングする
- 顔にかけるタオル →洗濯洗剤のニオイや院内のニオイがタオルに吸着していないか注意する
- 化学物質の臭い(口腔内に貼薬する次亜塩素酸ナトリウムやホルマリングアヤコールなど) →消毒、洗浄などの効果があり、なるべくニオイの少ない、または気にならない薬剤に切り替える、吸引などを効果的に行って臭いを拡散させない
- 修復材(レジンやセメントなど) →金属やセラミックを考える、セメントも種類を考える
- 医療スタッフの体臭や香水など →清潔感、香水はつけない
- 医療用ガス(酸素・笑気)の臭いなど →必要な場合は効果とその必要性を天秤にかけて比較する
味覚過敏
- 歯みがき粉やフッ素の味 →様々なタイプがあるので、本人に合ったものを探す、または使用せずにブラッシングを徹底する
- レジンやセメントの味 →事前に十分説明する、硬化するまで粘膜に触れないように注意する、どうしてもダメなら、材質を変更するか、治療方法を変更する(金属やセラミックなど)
- 粘膜に触れる器具(金属、ラバーなど) →なるべく触れないようにする、事前に説明する
- 薬剤 →こまめな吸引や、ラバーダムで粘膜に触れるのを避ける
触覚過敏
- 口唇正中の触覚過敏
- 口腔周囲の触覚過敏
- 口腔内の触覚過敏
- マスクや鼻マスク、タオルによる過敏
- 臀部や背中の触覚過敏にて治療台に座れない
→触覚過敏には総じて全身的または局所的な脱感作、マスクなどの触れるものに関しては使わないか、過敏が出ない素材のものを検討する
感覚過敏相談シートへのご意見・ご要望
さいごに
もう一度、相談シートのダウンロードのご案内でです。PDF(A4サイズ)