感覚過敏研究所の所長、加藤路瑛の母です。ついに、息子が高校生になりました。15年、本当に早かったです。そして、子育てに関して振り返った時、楽しいことしか思い出せませんが、あえて辛い話を・・・と言われたら、やはり「食事」になるかなぁという感じです。
食べない息子、偏食な息子、給食を食べない息子の幼少期と小学生時代につきましては、以前書かせていただいたので、今回は3部作の最終話です!
給食のない中学校に行きたい
前作、【体験談】食べない子どもの子育て〜小学生時代〜加藤路瑛編 で書かせていただいたように、入学して初めての給食で気持ち悪くなり、トラウマ的になった給食。それでも「給食が嫌だ」と言いながら学校に通い続けられたのは、「中学は給食のない学校に行く」という希望のような目標があったからです。
「今は辛いけど、中学は絶対、給食がない学校を選ぶ」
これが彼の執念のようなものでした。地元公立中学は給食です。ですから、彼は中学受験をすることを選択するのです。私たち夫婦は中学受験の経験がありませんから、未知の世界です。中学受験は勉強が得意な子がより勉強できる環境を求めて受験するものだと思っていました。「給食が嫌で中学受験をする」そんな消極的な理由で中学受験ができるものなのだろうか?と疑問でした。
しかし、息子は小学1年生の時に決めた「給食のない中学に行く」ただその1点で中学受験の勉強を乗り切り、見事、「お弁当持参」「売店あり」の私立中学に進学するのです。
問題は給食ではなかった・・・
給食問題から解放され、さぞ楽しい中学生活になると思いきや・・・残念ながら彼に待っていたのは辛い学校生活でした。
学校がはじまって数日、「お弁当生活、どう?」と息子に聞いたのです。「うーん、なんか嫌だから一人で食べてる」そう彼は答えました。楽しそうにみんながお弁当を食べている中、一人ぽつんとお弁当を食べている息子を想像して、チクっと胸が痛みました。
( ↑ この写真、息子本人です。モデルのお仕事をいただいた撮影用ですが、当時の彼も同じ様な状況でした)
話を聞けば、
・最初の数日はみんなと一緒にお弁当を食べていた
・でも、弁当のおかず交換をみんなしたがって、僕のおかずはなくなって、食べれないものと交換されてしまう
・みんなの話し声がうるさいし、くちゃくちゃ音を出して食べる人もいて、あまり側で食べたくない
そんな状況で、彼は離れて食べることを選んだようです。仲間といることよりも、自分の快適さを優先する傾向は以前からあったように思います。私は、自分の苦痛よりも1人になることが怖くて我慢する中高生時代でしたので、彼の決断を羨ましくもあり、これから続く友達関係が大丈夫なのかなと漠然とした不安を持っていました。
担任の先生は「確かに1人でお弁当を食べていますが、食べ終わったら、友達と話をしているので心配はないと思います」とおっしゃっていました。
しかし、1学期が終わる頃には、彼はお弁当を食べたら速攻、教室を出て、校内の静かな場所を探すようになりました。教室がお弁当の食べ物のニオイが混ざり合って気持ち悪くなるようなのです。そして、お弁当の時間からお昼休みに続く、生徒の賑やかな会話が彼には騒がしすぎて、静かな場所を探して、そして、そのような場所が少なく、居場所が見つからず、苦しくなっていったのです。
学校に行きたがらなくなった
学校に行きたがらなくまりました。世間の中学生男子と母親がどれくらいの会話量があるかはわかりませんが、私と息子はよく話し合う親子だと思います。「学校に行きたくない」と言えば、「それはなぜなのか?」を話し合います。
「お弁当の時間が嫌だ」と言えば、「お弁当の時間の何が嫌なのか?」を問います。食べ物のニオイが嫌だから1人で速攻食べて、教室を出る対策は彼はすでにやっていました。「すぐに食べ終わりたいから、お弁当の量を減らしてほしい」そのようなお願いもされたことがあります。あらゆる対策をしながらも、解決できていない状態でした。そこで、午後の授業から登校するという方法をとるようになりました。
しかし、学校にいる時間が減れば、クラスメイトと会話する機会も減り、登校しても話せる人が少ない、話したい人がいないという状態になっていました。「一人ぼっちは嫌だから我慢する」と「我慢するくらいなら一人でいい」というタイプがいるとすれば、彼は後者タイプです。
午後だけ登校から、次第に学校を休むことが増えて行きました。お弁当の時間がきっかけなのか、お弁当やうるさいというのは、後付けの理由でそもそも合わなかったのか、彼は学校に居場所を見つけられず、1年生の3学期は休むことが増えていました。
ここは居場所ではない
中学2年の1学期はほとんど登校しませんでした。運動会、足の速い息子がリレーの選手として活躍する姿を見るのが楽しみでした。しかし、2年生は運動会も出ず、彼は中学を拒絶していました。
彼の希望を尊重し、学校を退学しました。小学1年生の時、「給食がない学校に行く」と中学受験を決め、たくさん勉強して、入学し、高い私立の学費を払ってきたその学校をやめる。中高一貫だから高校受験もない。そのまま学校にいてくれないだろうか・・・母の私が決断できず、退学は中学2年生の秋になってしまいました。もちろん、給食が根本的な理由ではなかったのだと思います。理由の1つです。
息子の視点は、本人がnoteに綴っています。(有料マガジンなので興味があればご購読ください)
居場所を探して
私立中学を退学し、息子はN中等部という角川ドワンゴ学園が運営するフリースクールのような学校に通いはじめます。自由にしていい学校ですので、お弁当を一人で食べていても誰も気にもなりません。一人でご飯を食べ、一人でヘッドホンをつけ、ゲームしたり音楽を聞いている生徒は息子だけではないようです。
このように、学校における「給食」「お弁当」に我が家は翻弄されてしまった小学生・中学生時代でした。たかがが食べ物と思う方はいらっしゃるでしょう。偏食は甘えと思う人もいるでしょう。息子が神経質で繊細すぎると思う人もいるでしょう。これが彼、加藤路瑛なのです。
これからの生活、特に親の手を離れようとしているこれからも、彼が食べ物で悩むことはあるでしょう。それでも、きっと、自分の良いと思える居場所や方法を自分の力で見つけてくれると思っています。その意味で私の子育ては終わったようにも感じています。
卒業、おめでとう。
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